春を彩るソメイヨシノ、実は全部クローン 続く「最初の1本」探し

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桜井林太郎
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 いまや海外でも観賞が楽しまれるソメイヨシノ(染井吉野)。日本の桜を代表するこの栽培品種は、実はすべての木が遺伝的に同一のクローンだ。一番はじめの原木があったはずだ。いつ、どこからやってきたのか。ルーツ探しの研究は今も続いている。

 東京・JR山手線の駒込駅の隣にある染井吉野桜記念公園(豊島区駒込2丁目)。記念碑にはソメイヨシノの「発祥の里」とある。

 このあたりはかつて「染井」と呼ばれた。江戸時代には広大な大名屋敷からの需要で園芸ブームとなり、花卉(かき)や植木の一大生産地だった。

 ソメイヨシノは、江戸時代後期から明治初期にかけて、桜の名所である奈良県吉野山にちなんで「吉野桜」として、染井の植木屋によって売り出された。やがて交通網の発展とともに全国に広まっていったと考えられている。

 豊島区立郷土資料館の秋山伸一学芸員は「技術的に優れた植木屋が集住していた染井地域は、江戸の園芸センターだった。ただ、ソメイヨシノの誕生はなぞのベールに包まれている」と言う。

 ソメイヨシノの名前が初めて文献に登場するのは1900(明治33)年。東京帝室博物館(現・東京国立博物館)の藤野寄命という学者が日本園芸会雑誌に報告した。

 東京・上野公園の桜を見ていたところ、吉野山に多い山桜とは違うことに気づき、染井から来た吉野桜として「ソメイヨシノ」と名付けられた。

 だが、原産地はいまもはっきりしない。

 大正時代に日本に自生するエドヒガンとオオシマザクラの雑種だという説が出たが、当時は相手にされなかった。昭和に入り、韓国・済州島にある「エイシュウザクラ」が日本に移ってきたという説が有力視された。

 戦後、人工交配実験や、花や葉の観察によって、エドヒガンとオオシマザクラの雑種で、伊豆半島が起源だとする説が打ち出された。

 分子生物学の発展がこのなぞの解明に大きな武器となった。

 DNA解析が導入され、まずソメイヨシノの「母方」がエドヒガンだと判明。さらに「父方」がオオシマザクラだとわかった。「父方」はオオシマザクラとヤマザクラの雑種といった説もある。エイシュウザクラは、エドヒガンと別の野生種との雑種とわかり、韓国起源説は打ち消された。

 ゲノム解読の研究では、ソメイヨシノの二つの祖先種は552万年前に異なる種に分かれたと推定され、それが百数十年前に交雑してソメイヨシノを生み出したと考えられるという。

 ソメイヨシノは、親木から切…

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