復興遅れる原発被災地、避難なお3万人超 東日本大震災から12年

古城博隆
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 全国で関連死を含む死者・行方不明者が2万2212人となった東日本大震災から、11日で12年を迎える。津波の被災地で住まいやインフラの整備がほぼ終わり、被災者の心のケアなどに課題の重点が移る一方、東京電力福島第一原発事故の被災地で復興の遅れが際立つ。放射線量が高くて住めないとされた帰還困難区域の一部で、昨年から避難指示が解除され始めたが、地域の再生にはなお難題が山積する。

 警察庁によると、震災による直接の死者は全国で1万5900人、行方不明者は2523人(1日現在)。復興庁によると、関連死は3789人(昨年度末現在)。避難者はピーク時の約47万人から減ったが、今も約3万1千人にのぼり、福島県からが9割を占める。

 2021年度から国の予算が大幅に減り、23年度の復興庁の当初予算案は5523億円。復興が本格化した13年度の2割に満たない。中間貯蔵施設の整備費や帰還支援など原発事故関連が9割を占め、残りは心のケアや災害公営住宅の家賃支援などに充てられる。

 福島県では、11市町村の避難指示区域から8万人以上が避難したが、解除後の居住人口は約1万6千人にとどまる。放射線量が高くて住めない地域が7市町村に残り、昨年6月以降、地域を限定して避難指示が順次解除された。ただ、実際に帰還したのは約100人、住民登録の約1%にとどまる。

 今月31日には浪江町で、その後も富岡町、飯舘村の一部で避難指示の解除が続く予定だ。政府は2月、現行の避難解除地域以外でも希望者が帰還できるよう、除染を進めることを決めた。

 春から夏ごろには国と東電が、福島第一原発の処理水の海洋放出を始める方針だが、風評被害が懸念されている。

 来年2月には東北電力女川原発宮城県女川町石巻市)の再稼働をめざす。再稼働すれば、被災地も含め東日本の原発としては震災後、初となりそうだ。岸田政権は今年に入り、原発の新規建設や60年を超えた運転を可能とする方針を打ち出し、震災後に見直した政策を大きく転換した。

 岸田文雄首相は11日、福島県が主催する追悼式典に参加する。(古城博隆)

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