第4回「普通の夫婦」が選んだ東京での農業 土地は、収入は…14年後の今

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 田畑を相続できる後継ぎ以外で、東京で農家となった「第1号」は、瑞穂町の井垣貴洋さん(45)と美穂さん(44)の夫婦だ。農地が少ない東京でも、農業ができる――。多くの後進に道を開いたパイオニアの2人に、これまでとこれからを聞いた。

 ――畑に雑草があり、野菜も大小、ふぞろいですね。

 貴洋さん 瑞穂町で1反4畝(せ)の畑を借りて始めたのは2009年春のことです。以来、無農薬・無肥料の自然栽培に取り組んできました。有機肥料すら使わないので、商品としての希少性が高い。こうした野菜を好まれる方が都内なら一定程度、いらっしゃいます。地産地消の点でも喜ばれるので、購入時の選択肢になり得ると思っています。

 ――以前は福祉関係の仕事をしていたと聞きました。

 貴洋さん 私自身は兵庫県出身でサラリーマン家庭で育ち、福祉専門の日本社会事業大学(東京都清瀬市)に進学するため、上京しました。卒業後は、障害者関係の財団法人に就職しました。

 美穂さん この人とは大学で知り合ったんです。卒業後、私は保育士になりました。

 ――なぜ農業へ?

 美穂さん 結婚前、この人はたびたび手術をして、早くに死ぬ可能性もあると医者に言われました。その前提で何をやるかなと考えたんです。

 貴洋さん 学生時代に高知の四万十川と農村風景を見て憧れていました。先の人生を考えたとき、農業って仕事にできるのかな、と。調べたら、脱サラして農業をやる人が、地方にはたくさんいると分かり、後押しになりました。

「東京では無理」が一転 

 ――就農先の決め方は?

 美穂さん 全国各地で検討して、あちこちから声がかかりました。過疎地域ほど熱心な誘いでした。中には農家の養子になる、という話もありました。

 貴洋さん ただ就農相談に行くと、まずは農薬や化学肥料を使う普通の栽培でやってほしい、と言われて話が進みませんでした。当時から無農薬を希望していましたが、地方だと売り先の確保が大変。就農先が大事だとだんだんわかってきました。

 ――大消費地・東京なら望んだ形でできそうだと。

 貴洋さん 東京限定で考えた…

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