世界で仲間外れにならないこと 日銀総裁の資質、20人から白羽の矢

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 10日金曜の午後3時、東京株式市場でその日の取引が終了した。しばらくして、岸田文雄首相は携帯電話を手に取った。電話の相手は自民党麻生太郎副総裁だった。

 日本銀行の次期総裁に経済学者の植田和男氏を起用する方針を告げた。麻生氏にとって、植田氏の名は初耳だった。

重視した「インナーサークル」の連携

 首相と麻生氏、自民党の茂木敏充幹事長の3人は昨年末から次期総裁について議論を続けてきた。その中で一致していたのは、主要国の中央銀行トップたちが意見交換をする「インナーサークル」に入って緊密に連携し、市場とも対話ができることだった。「財務省や日銀の出身者ではなく、学者という手もある」とも話し合っていた。

 麻生氏は学者を総裁に起用する場合の助言もしていた。「組織の動かし方を知らないから」として、副総裁に日銀理事の内田真一氏と前金融庁長官の氷見野良三氏を提案。首相は電話で「しっかり就けましたから」と付け加えた。

 2日前の8日夜、首相は東京・四谷の日本料理店で麻生氏、茂木氏と約3時間半にわたって会食した。日銀総裁の人事案も話題に上った。「国際性とマーケットへの質の高い発信力と受信力が重要だ」。3人で改めて確かめ合うと、首相は「条件に合ういい人を見つけました」と打ち明けた。

 首相はこの時すでに植田氏に…

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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2023年2月15日9時58分 投稿
    【視点】

    誰がやるにしても、薄氷を踏む仕事にならざるを得ない状況および役割である。次期総裁には、政界や官界の対抗関係に惑わされず、日本経済を軟着陸させてくれることを期待したい。

    …続きを読む