「接近による変容」ロシアには通じず ドイツが待った戦車提供の時宜
ロシアの侵攻を受けるウクライナに、ドイツが主力戦車「レオパルト2」の提供を決めました。なぜ、これまでの慎重な姿勢を変えたのでしょう。ドイツ政治に詳しい東京大学大学院の森井裕一教授に聞きました。
――提供を決めたドイツの事情は。
ドイツ政府はこれまでにも、高性能の防空ミサイルシステムや歩兵戦闘車などをウクライナに提供してきました。しかし、それだけでは足りないという認識がショルツ政権の中で次第に強くなりました。
政権は社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)による連立です。外相や経済相を出している緑の党は、当初から高度な兵器の提供に積極的でしたが、SPDは慎重でした。
1月20日にドイツ西部にあるラムシュタイン米空軍基地で欧米など約50カ国の国防相らによる協議がありましたが、そこでも「レオパルト2」の提供については結論が出ず、連立政権内でもSPDの姿勢に批判の声が高まっていました。
「間違っていた」 ロシアを前に考えが変わった
――SPDはなぜ慎重だったのでしょう?
第2次世界大戦の反省からドイツ外交は、当時のような行動を繰り返さない▽単独行動をしてはいけない▽外交による交渉を常に優先する――という融和的な政策を大前提にしています。冷戦時代も東側の国々と経済的・社会的な交流をすることで相手の認識や姿勢を変える「接近による変容」を重視してきました。
そうした考え方が背景にあり、ロシアのプーチン政権からも、パイプライン「ノルドストリーム」を通じた天然ガスの輸入などを進めてきたのです。
SPDは特に強く、この「接近による変容」を認識してきたと思います。
しかし、ロシアによるウクラ…
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- 【解説】
森井さんの解説はきちんとショルツ政権の中でも社民党と緑の党・自由民主党を分け、旧西ドイツと旧東ドイツをわけ、ドイツの国内で何が起こっているのかというダイナミクスを丁寧に説明している。「接近による変容」は、冷戦を終わらせたのがデタントである、
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