元入管職員が語った限界 「全件収容」システムに翻弄される命と人生

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聞き手・西崎啓太朗
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 入管施設に収容されている外国人が病気などで亡くなるケースが相次いでいる。入国管理局(現・出入国在留管理庁)で18年間勤務した後、早期退職して「未来入管フォーラム」を立ち上げた木下洋一さんは、「職員のモラルというよりシステムの問題だ」と語る。内側から見た入管システムの問題点とは。どうすれば変えられるのか。

 ――木下さんは元入管職員ですね。

 「私は2001年から入管で18年間、入国審査官として上陸や在留の審査などを担当しました。入国審査官は非正規滞在者に出国を命じる退去強制処分や、個別の事情に応じて特別に在留を認める在留特別許可(在特)の判断にも関わります」

 ――4年前に退職されたのですか。

 「迷った末に早期退職を選びました。勤務を続けるなかで現在の入管制度への疑問が膨らみ、このシステムに限界を感じるようになっていったからです」

 ――どんなところに限界を感じるようになったのでしょうか。

 「在留資格のない両親の間に日本で生まれ、日本語を話して生活していた小学生が、見たこともない『祖国』に送還される姿を目の当たりにし、疑問を持ち始めました。子どもたちは、『帰国しても、十分に現地の社会になじむことができる』と自らの意思に関係なく判断されて、親とともに強制送還されていました。もちろん、子どもをそのような状態に置いた親の責任は大きいと思いますが、子どもは親を選べるわけではなく、釈然としないものを感じました」

 「在特の付与の判断にも、強い違和感を持っていました。同じような事例であっても、その時期の政策や入管内部の事情等によって在特が出たり出なかったりしたのです」

 ――具体的にはどういうことですか。

「政府目標」で判断された在留特別許可

 「06年に配属された横浜支…

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