IGR20年、これからの「走り」へ組織横断チーム結成し活性化策も

藤井怜
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 IGRいわて銀河鉄道は、今月1日に開業20周年を迎えた。同日には盛岡駅でイメージキャラクターを駅長に任命する催しが行われた。岩手県北部にとって大事な地域の足。これまでの20年、そして、これから。IGRはどんな方向をめざし、どう走っていくのか。

 この20年間で運んだ乗客数は約9900万人、運行本数は約60万本――。

 IGRは2002年12月に誕生した。東北新幹線が盛岡から八戸まで延伸されたことに伴い、JR東日本から経営分離された旧東北線のうち、盛岡―目時(青森県)間の経営を第三セクターとして引き継いだ。

 駅数は青森県管理の目時を除いて17駅で、営業距離は約82キロ。通勤や通学などを中心に、1日約1万4千人以上が利用している。また、1日約50本の貨物列車も運行し、荷物を輸送する役割も担っている。

 地域住民にとって欠かせない交通の手段だ。それを示すように、岩手県、盛岡市、滝沢市、岩手町、二戸市、一戸町の沿線自治体をはじめ、19自治体と30の企業・団体が出資している。

 しかし、経営は厳しい状況が続く。開業初年度である2002年度の赤字は約2億円にのぼり、10年後の12年度は約2・3億円の黒字だったが、人口減やコロナ禍の影響でここ数年は赤字が続いている。今年6月に発表された21年度決算は約2・8億円の赤字で、過去最大だった。

 苦しい状況のなか、地域の足として運行し続けるため、浅沼康揮社長は「定期の継続的な利用や、より事業を磨き上げ、多くの人に足を運んでもらえることが必要だ」と述べる。その上で、自治体からの支援と開業20周年記念事業の相乗効果で、利用促進をはかる。

 今回の20周年では、プロジェクトチームを結成したのが特徴だ。企画担当の部署だけでなく、総務部や運輸部など各部から人を募り、チームが主体となって社内から意見を集めた。

 たとえば、駅名標のリニューアルもその一つだ。

 沿線の名所・名物のイラストをモチーフにデザインした「えきいろ」を駅名標にとりいれ、親しみを感じてもらうとともに、沿線の魅力の再発見につなげる狙い。社内でデザイン案の評価を共有し、アンケートで出た声などを参考にしながら、改善し決めていった。

 地元自治体も支援に乗り出す。県や沿線の自治体は9月、利用促進事業に対する支援を決めた。県は今年度の補正予算を編成して、「いわて銀河鉄道利用促進協議会負担金」として1千万円を助成する。この財源を使い、12月1日から土日祝日と年末年始乗り放題の半額キャンペーン(来年2月末日まで)などを行っている。

 12月1日の記念イベントで、子どもと一緒にキャラクターと写真を撮った盛岡市の種市紀子さん(46)は「岩手は冬などに渋滞すると、バスが遅れるけれど、電車はスムーズに運んでくれる。これからもがんばってほしい」とエールを送った。

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