オトナ帝国の夕日の商店街から3人はもう帰らない(小原篤のアニマゲ丼)

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 今回は23日公開の映画「かがみの孤城」原恵一監督インタビューなのですが、2001年の名作「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」の話から始めます。

 「『かがみの孤城』にとりかかっていたこの3年の間に、3人の大切な人が亡くなってしまいました。美術の中村隆さん、アニメーターの木上益治さん、声優の藤原啓治さんです。中村さんは僕にとってアニメーションの世界で一番古い仲間で、一番頼りにしていた人です。『かがみの孤城』でも仕事をお願いして、亡くなるほんの少し前にも打ち合わせをしていたので、突然の知らせにショックを受けました」

 「木上さんは僕がシンエイ動画に入った時の先輩で、木上さんが京都アニメーションに移った後もいろいろな作品で大事なシーンをお願いしましたが、思い出すのは『オトナ帝国』の夕日町の商店街のモブシーンです。歩く人、自転車に乗る人、買い物をする人、たくさんの人を丁寧に生き生きと描いてくれて素晴らしかった。あのシーン、背景は中村さんでした」

 「藤原さんは、19年公開の前作『バースデー・ワンダーランド』に出てもらいました。病気療養から復帰後ということで『無理かも』と思ったけど頼んだらやってくれて、割と普通そうだったんですけど、やはり突然亡くなったと聞いてショックだったし、喪失感も大きかったです」

 懐かしくて切なくてたまらない夕焼けの夕日町。藤原さん演じるしんのすけの父ひろしも、クツの匂いを嗅いで「懐かしさ」の誘惑に耐えていました。お三方がもういないと思うと、切なさが更に募ります。中村さんは21年6月、藤原さんは20年4月、木上さんは19年7月のことでした。皆さん、堂々たるキャリアをお持ちですが、やっぱり早過ぎます。

 「木上さんが京アニの作画の…

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