第8回男はつらいよ、なぜ「女より」? 「生きづらさ」の乱用が隠すもの

有料記事「男性を生きづらい」を考える

聞き手・阿久沢悦子

 生きづらさを訴える男性から、「仕事だけで手いっぱいなのに、育児や介護などのケアワークを求められる」という声を聞きます。だから男性はしんどいのでしょうか。親を介護する男性を通し、「男らしさ」について考えた「介護する息子たち」の著者で、大阪公立大准教授の平山亮さんに聞きました。

 ――従来の「男は仕事」という男性モデルに加えて、育児や介護などのケアに携わることが増え、「しんどい」という男性の声があります。

 どれくらいの時間のスパンで見るかにもよりますが、男性による介護、育児の全体的傾向に、それほど大きな変化は見られません。

 介護の担い手に関しては、「息子の妻」の割合が減り、「息子」の割合が増えたことが注目されますが、「娘の夫」はごく少数です。「娘」と「息子」を比べたら、「娘」の方が多い状況はこの20年くらい変わりません。

 育児時間も、2021年の社会生活基本調査によれば、6歳未満の子がいる家庭の家事関連時間は、夫が5年前より31分増えて1時間54分となったものの、妻の7時間28分に遠く及びません。

 重要なのは、女性との差がどこまで縮まったかということです。ケアに関して、メディアが変化ばかりを強調することで、ほとんど変わっていない部分が見えにくくなっていくことを心配しています。

男性は「助けを求められない」のか

 ――一般的に男性は「ケアワークが苦手」と思われてきました。それが現代の男性のストレスの一つの要因になっていることはないですか?

 男性が本来的にケアのスキルに欠けているという根拠はありません。逆に女性が何の努力もせずにケアができるようになるわけでもありません。

 ジェンダーの語られ方で問題…

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男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]

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