国定公園に指定直後、持ち上がった北陸新幹線の延伸計画 揺れる集落

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野口陽

 かやぶき屋根の39棟が立ち並ぶ、昔話に出てくるかのような風景がある。京都府南丹市美山町にある「かやぶきの里」。その風景を一目見ようと多くの観光客が四季を通じて訪れ、国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されている。

 町を囲む緑と清流も魅力で、川遊びやキャンプに訪れる人も多い。政府は2016年3月、この地域一帯を、多様な生態系と文化的景観が相まった「雄大で美しい景観」「傑出性が高い風景」だとして国定公園に指定した。

 そのわずか9カ月後。この地に北陸新幹線のトンネルを掘り抜く計画が持ち上がった。計画を決めたのは与党自民党、公明党の国会議員で作る整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)。敦賀(福井県)と新大阪とを結ぶ新たな路線を作るためで、工期は15年、区間の8割がトンネルだ。

 南丹市付近で検討されているのは直径10メートルの山岳トンネルや、土砂を運び出すため4~7キロメートル間隔に掘る斜坑。町で出る土砂は少なくとも計170万トン。5年で運び出す場合、毎日10トントラック190台が町を貫く細い道を行き来する――。

 今年8月のある晩、かやぶきの里で開かれた住民向け勉強会。町内に住む神戸大学の長野宇規准教授(地域計画)は、そんな試算を示し、こう話した。「190台トラックが走ったらこの地域はアウト。しっかり交渉しないと泣き寝入りすることになる」

 「観光どころの騒ぎではない…

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