座間9人殺害事件 発覚から死刑判決確定まで
犠牲になったのは、1都4県の9人だった。
①神奈川県の当時21歳の女性Aさん
②群馬県の当時15歳の女性Bさん
③神奈川県の当時20歳の男性Cさん
④埼玉県の当時19歳の女性Dさん
⑤埼玉県の当時26歳の女性Eさん
⑥福島県の当時17歳の女性Fさん
⑦埼玉県の当時17歳の女性Gさん
⑧神奈川県の当時25歳の女性Hさん
⑨東京都の当時23歳の女性Iさん
事件が発覚したのは2017年10月30日のことだ。
警察官が行き着いたアパートで
同月21日から所在不明になっていた東京都八王子市の女性Iさんの行方を追っていた警視庁の警察官が、IさんのSNSでのやりとりを手がかりに神奈川県座間市の木造アパートを突き止めた。住人の男を追及したところ、男は当初は弁解したものの間もなく自白をはじめ、説明通り室内からIさんを含む9人の遺体の一部が見つかった。
翌31日未明、Iさんに対する死体遺棄容疑で白石隆浩容疑者(呼称は当時)が逮捕された。
白石容疑者はその後の調べに一貫して犯行を自白し、精神鑑定を経て18年9月に起訴された。
20年9月に東京地裁立川支部で始まった公判で、検察は白石被告が犯行に至るまでの経緯を振り返った。
「ヒモになりたい」
1990年に神奈川県内で生まれた白石被告は、高校卒業後にスーパーやパチンコ店などで職を転々とし、2015年10月には女性を風俗店に紹介するスカウトの仕事を始めた。17年2月、この仕事に絡んで逮捕される。
翌月に保釈されて実家に戻って父親と暮らし始めると、「父親と離れて働かずに楽して暮らしたい」「女性のヒモになりたい」と考えるようになった。「自殺願望のある女性なら言いなりにしやすいだろう」。ツイッターのアカウントを開設し、自殺願望があるような投稿をしたり、自殺願望を表明している女性に「一緒に自殺しよう」と誘ったりした。
同年5月末、執行猶予付きの有罪判決を受けた。
最初の被害者、Aさんと知り合ったのは判決から2カ月余りがすぎた同年8月のことだった。
自殺願望をツイッターで投稿していたAさんに会って悩みを聞き、説得して自殺を思いとどまらせた。そして同居を持ちかけ、Aさんから預かった金で座間市のアパートを借りた。
「Aさんのヒモになれそうもなければ、部屋で首をつって殺そうと考え、あえてロフト付きの部屋を借りた」。検察は供述に基づいてそう主張した。
最初の犯行、その後の「決意」
いずれAさんが自分から離れていくと感じた白石被告は8月23日、最初の殺害を実行する。アパートを借りるための金の返済を免れようとしたのが動機とされる。
「いきなり背後から押し倒して首を絞めた」。白石被告は法廷でそう語り、この時点でAさんには「死にたい」という気持ちがなかったとも証言した。失神したAさんに欲情して性的暴行を加え、殺害した。
性的快感を得て金銭を得たことに味をしめた白石被告は、同じような犯行を続けることを決意したとされる。
その後2カ月の間にほかの7人の女性に性的暴行を加えて殺害したうえで所持金を奪い、Aさんの知人だった男性Cさんを口封じと現金を奪うために殺害した。
死刑を求刑した検察側に対し、弁護側は「自殺願望を抱いていた被害者が、自殺の手助けを持ちかけた白石被告に会いに行った」という経緯を重視し、殺害の同意を得ていたとして、法定刑の軽い承諾殺人罪の適用を訴えた。
判決公判は20年12月に開かれた。
「犯罪史上まれに見る悪質さ」
裁判長は結論部分の主文を後回しにし、判決理由から読み上げていった。そこでは、被害者全員に殺害の承諾はなく、金・性目的で計画性がある「身勝手な犯行」と認定。また「精神的に弱っている被害者を誘い出す手口は狡猾(こうかつ)、巧妙で卑劣というほかない」と非難し、「SNSの利用が当たり前になっている社会に大きな衝撃や不安感を与えた」と指摘した。
そして「9人もの若く尊い命が奪われた結果は極めて重大。犯罪史上まれに見る悪質な犯行だ」と述べ、極刑を言い渡した。
弁護側は判決を不服として東京高裁に控訴したが、白石死刑囚自身が取り下げた。
判決は21年1月5日午前0時に確定した。
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