1971年に起きた渋谷暴動事件で警察官を殺害したとして、殺人罪などに問われた過激派「中核派」の構成員・大坂正明被告(73)の初公判が25日、東京地裁であった。46年間の逃亡生活を経て逮捕された大坂被告は「全ての容疑についてその事実はありません。したがって無実であり無罪です」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。

 起訴状などによると、大坂被告は同年11月14日、東京都渋谷区であった、米軍駐留を認めた沖縄返還協定に反対するデモで、新潟県警から派遣された中村恒雄巡査(当時21)を、他のデモ参加者らと鉄パイプなどで殴り、火炎瓶を投げつけて殺害したなどとされる。殺人罪のほか、凶器準備集合、公務執行妨害、傷害、現住建造物等放火の罪でも起訴されている。

 大坂被告はこの日、無罪を主張したうえで「証拠とされた当時の参加者の供述調書は、取り調べを行った官憲による創作文でしかない」とも述べた。51年前の事件の裁判であることに触れ、「証拠は散逸し、防御権の行使も十分にできない」と訴えた。

 渋谷暴動事件では過激派の学生らが暴徒化し、機動隊と衝突。中村巡査が死亡したほか警察官3人もやけどを負い、約300人が逮捕された。

 大坂被告は殺人容疑などで指名手配されたが、73年に仲間を訪ねて以降消息が途絶えた。警視庁公安部は2012年3月、東京都立川市の中核派のアジトを捜索し、大坂被告が国内で潜伏を続けていることを確認。2017年5月に大阪府警が広島市のアジトを捜索した際、捜査員に体当たりしたとして公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕=不起訴処分=された男が大坂被告だと確認され、警視庁が殺人容疑で再逮捕した。

 東京地裁は今年3月、「裁判員が危害対象になり得る」と判断し、裁判員裁判の対象から除外した。