第3回私が髪を隠すのは「当たり前」 殉教者になった父が望む国家をつくる

 外出する時は必ず鏡に向かい、髪の毛がきちんと隠れているか入念にチェックする。

 さらに、体のラインが見えないよう、かかとまでの長さがある布をまとう。

 頭はヒジャブ、全身はチャドルと呼ばれる布だ。

 ザフラ・カーベ(37)は外に出るたび、こうして身支度を整える。

【連載】「ヒジャブ 脱ぐか、かぶるか イスラム女性たちの選択」

髪の毛を隠す「ヒジャブ」をめぐり、イランで22歳の女性が逮捕後に急死しました。抗議の声は日本にも広がっています。欧米では抑圧の象徴とみられることもあるヒジャブ。3人の女性が内に秘めた思いを語りました。

 母国のイランは1979年の革命で、イスラムの教えに基づく宗教国家となった。

 83年には法律で、すべての女性に対し、布で髪の毛と体の線を隠すことが義務づけられた。

 いまの体制が大切にするこうした価値観を守るようになったのは、父親の影響が大きい。

 父マフムードは、カーベが1歳9カ月の時に亡くなった。

 政府軍とは別の精鋭部隊「革…

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    長島美紀
    (SDGsジャパン 理事)
    2022年10月20日9時33分 投稿
    【視点】

    先日、大学の授業で受講生からのコメントでジェンダー課題に関心を持つきっかけとしてイランを舞台にした2人の女の子の恋愛とその顛末を描いた「九時の月」を挙げていた人がいました。同書を読了したばかりだったこともあり、ヒジャブをめぐるこの連載を興味

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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2022年11月24日10時37分 投稿
    【視点】

    御父君の話を脇において客観的にみれば、「政権子飼いの勢力」を優遇して支持層を固め、維持している体制だという記事として読める。 ありがちな統治方法といえるだろうが、こうして優遇される層の外におかれた人々にとっては、不公正と不平等に満ちた

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