2年以上止まったままの鉄路 復旧しても「乗らない」住民が語る本音
2020年の記録的豪雨で大きな被害を受け、約7割の区間で運休が続くJR肥薩線(八代―隼人)。国や熊本県は復旧を熱望するが、被災区間は豪雨前から赤字となっていた路線で、利用者増の見通しも立たない。沿線住民の声に耳を傾けると、立場の違いによる温度差が浮かび上がった。
熊本県人吉市の山あい、線路沿いは1メートルほどの高さまで草が生い茂り、レールを覆い隠していた。バーが取り外された遮断機の横を車が次々と走り抜ける。2年前、近くを流れる球磨(くま)川の氾濫(はんらん)で線路は寸断され、周辺の景色は一変した。
2年以上列車の運休が続く人吉駅前は、乗客待ちのタクシーが数台停車していただけで、人影はまばら。
駅から徒歩10分、球磨川沿いに立つ創業88年の老舗「人吉旅館」を訪ねると、おかみの堀尾里美さん(64)は悲痛な声を上げた。「肥薩線は200%必要。5年以内に復旧してほしい。それ以上遅れれば、旅館の経営が立ちゆかなくなる」
宿泊客の3割は肥薩線利用者だった。鉄道ファンに愛される観光列車「SL人吉」に乗って訪れる客もいた。旅館は今年5月に全面再開し、観光支援策「県民割」の効果などで客は徐々に戻ってきたが、肥薩線が動いていたときに比べれば予約は7割ほどにとどまる。「肥薩線が通ったら行く」と連絡をくれる常連客も多い。
被災直後から、ほかの旅館のおかみとJR九州の社長に要望書を出し、線路に生えた草を刈るなど早期復旧に向けた活動もしてきた。
だが、JR九州は採算が取れ…
【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら