半世紀前からSDGs 「取りすぎないキンメ漁」の外房ルールとは

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編集委員・北郷美由紀
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SDGs 国谷裕子さんと考える

 午前1時半。江戸時代から漁業が盛んな千葉県勝浦市の勝浦港から、1隻の船がキンメダイ漁に出た。キンメは、旅館の目玉料理にもなる高級魚で、甘辛の姿煮は地元でも1皿3千円ほど。小型船に1~3人が乗り、黒潮が北上する太平洋から釣り上げてくる。

朝日新聞は2017年からジャーナリストの国谷裕子さんと共に取材して、SDGsの取り組みや課題を紹介しています。今回は、千葉・外房で半世紀前から続く「取りすぎないキンメ漁」の現場を訪ね、持続可能な漁業について国谷さんと共に考えます。

 霧がたちこめるなか出航したのは、漁師歴43年の石井明人さん(62)の全功丸。6月末、記者は乗せてもらった。港の出口にさしかかると、遠くの丘の鳥居に向かって、石井さんは手を合わせた。「無事に帰ってこられますように。房総の海は怖いからね」

 港から10~26キロ離れた、大海原の漁場まで2時間あまり。霧が晴れ、月明かりが届く海面を進みながら石井さんは言った。

 「漁師にとって、海は米びつ。だから、魚は取りすぎちゃいけない。SDGs(持続可能な開発目標)って言うけどさ、俺たちはずっと前からやっているよ」

 沖合での一本釣りの一種であるキンメ漁には規制はなく、自由な操業が可能だ。ところが勝浦沖で操業する外房エリアの漁師たちは、50年以上前から自分たちで様々なルールを作り、「取りすぎない漁業」に取り組んできた。

 操業エリアに定めている海域…

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この記事を書いた人
北郷美由紀
編集委員|SDGs担当
専門・関心分野
SDGs サステイナビリティ 市民社会
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    北郷美由紀
    (朝日新聞編集委員=SDGs)
    2022年9月19日9時6分 投稿
    【解説】

    魚を取ることが仕事の漁師さんが、魚を取りすぎないために一致協力しています。それもかれこれ50年! 取材で多くの方からお話を聞きましたが、どなたからもSDGsという言葉がふつうに出てきて驚きました。やってきたことを外の人に表現するのに、ちょう

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