「警視庁捜査2課」の男と37分間の電話 何か変…記者は見抜いた
5月中旬、金曜日の午前9時過ぎ。自宅で取材先に向かう準備をしていた時、スマートフォンが鳴った。相手の番号を確認せずに、そのまま電話に出た。
「警視庁捜査2課のマツオカといいます。こちら、染田屋竜太さんの電話で間違いないでしょうか」
声の主は20~30代の男性とみられる。落とし物などに関する話ならば警察署から電話があるはず。本部の刑事というのが少し引っかかった。
「愛知県警から経済犯罪の捜査要請を受けておりまして、電話しております」
はっきりした口調で、言葉遣いは丁寧だ。「情報漏洩(ろうえい)の観点からお一人の環境でご対応していただきたいのですが」
自宅に1人だったので「大丈夫です」と答えた。すると、「今、どういった環境でしょうか。ご自宅で1人という環境は間違いないですね」と念を押された。
「事件に関与したのでは?」
そして、男は「捜査報告書によりますと、愛知県警の方でヒグチタクヤの大規模な資金洗浄の捜査を進めておりまして、ヒグチの自宅から大量の銀行キャッシュカードと通帳が発見されました」という。
取材には加わっていないが、同じ名前の容疑者が4月、愛知県警と警視庁に詐欺容疑で逮捕されていたことはたまたま知っていた。
「その中に染田屋竜太さんご名義のキャッシュカードが発見されまして……」
とっさに頭によぎったのは、個人情報の流出だった。
相手は具体的な銀行名を挙げ、「○○銀行で口座をお持ちだと思うんですが、この銀行では個人で四つの口座を持つことができます。二つ目をつくられた記憶はありますか」
「ありません」と答えた。
「見つかったカードの口座開設時に登録された住所のご確認をお願いいたします。東京都……」。住所は自分のものだった。本当に自分名義だとしたら再発行などの手続きが面倒だな……と感じた。
「カードは資金洗浄に利用されておりまして、染田屋さんご自身が何らかの形で事件に関与されているのではないかと」
急に、矛先が自分に向かってきた。
告げられた「2点の嫌疑」
「現状、2点で嫌疑がかかっ…