鼻を強くかんだ時の難聴、検査が簡便に ウクライナから問い合わせも
ダイビングや鼻を強くかむことでも起きる難聴・めまいの原因の一つ「外リンパ瘻(ろう)」。この診断を、切開手術なしで簡便に行える埼玉医科大(埼玉県毛呂山町)の独自技術が今夏、保険適用となった。爆風を受けた兵士の診断にも使えるため、ウクライナからの問い合わせもあるという。
外リンパ瘻は、耳に強い圧力がかかることで中耳と内耳を仕切る膜が破れて外リンパが漏れることで、難聴とめまいが生じる病気。飛行機の搭乗や鼻を強くかんだり、ダイビングをしたりすることでも発症し、突発性難聴や慢性めまい症の原因となる。
診断はこれまで、皮膚を切開し、肉眼で外リンパの漏れを判断していた。埼玉医科大の池園哲郎教授は2009年、外リンパにのみ発現するたんぱく質を検出する方法を発見。耳に生理食塩水を入れて回収、分析する診断技術を開発し、同大が特許を取得している。
この技術を使った検査キットは18年に製品化。今年7月、有効性や安全性が確認され保険適用が決まった。池園教授は「外リンパ瘻は明らかな原因がなくても発症することがあるのでやっかいだが、比較的軽微な手術で治すことができる。患者にあまり負担をかけず、肉眼ではなく客観的に判断できるメリットは大きい」と意義を語る。
ロシアの侵攻を受けたウクライナから「爆風で耳をやられる人が多く、その影響を診断したい」という問い合わせもあるという。池園教授は「検体を日本に空輸できないので今すぐは難しいが、戦争が終結したら、後遺症のめまいや難聴で悩む人の役に立ちたい」と話している。
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