マイケル・ジャクソンに憧れた日本人女性がタンザニアでパンを焼く訳

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今泉奏
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 東アフリカのタンザニアで、あんパンがひそかなブームになっている。火付け役は、ひとりの日本人女性。「ストリートボーイ」と呼ばれる路上で暮らす青年たちを、パン職人として育て、人生の再スタートを後押ししている。

 インド洋から吹く風にのって、あんこの香りが漂う。松浦由佳さん(31)は7月下旬、タンザニアの最大都市ダルエスサラームでパン店「JOY BAKERY」を開いた。

 「幸せのパン店」という意味の店名には「従業員たちと楽しい未来を築きたい」という思いが込められている。

 「マイケル・ジャクソンに会いたい」。リビングでエレキギターをかき鳴らすバンドマンの父親の影響で、物心ついたころには「キング・オブ・ポップ」と呼ばれたマイケルがヒーローだった。

 音楽やダンスだけでなく、アフリカへの援助を続ける姿に憧れた。「私もやらなきゃ」。日本で唯一、東アフリカの共通語でもあるスワヒリ語を専門的に学べる大学に進学。在学中には、1年間タンザニアに留学した。

 留学生活は苦労の連続だった。渡航初日、留学生の窓口にいくと、届いているはずの書類は紛失されていた。「終わった。もう帰らなきゃいけないのかな」。戸惑ったが、あきらめない。

きっかけはメロンパン

 覚えたてのスワヒリ語で交渉し、なんとか寮に入れてもらった。原本が必要な出願届や教授の推薦状、成績表を手作業で「複製」。無事に入学を許可された。

入国早々のピンチに続き、留学中にマラリア6回、起業後は資金の持ち逃げや詐欺までトラブルだらけのタンザニア生活。それでも、なんとか乗り越える。得意のスワヒリ語とバイタリティを武器に。

 寮生活では、マラリアの診断…

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この記事を書いた人
今泉奏
ヨハネスブルク支局長|サハラ以南アフリカ担当
専門・関心分野
アフリカ、植民地主義、グローバルサウス
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    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2022年8月27日12時22分 投稿
    【視点】

    舌を巻くとはこのこと。過去20年間、発展途上国でたくさんの日本人や外国人に出会い、僻地で活動している青年海外協力隊のお話も聞いてきましたが、本当に凄いと思った人のうちの一人。まずきっかけがすごい。マイケル・ジャクソンに憧れた人はゴマンと居る

    …続きを読む