NATO、冷戦終結以来の転換点 初の「脅威」認定、ロシアにするか

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聞き手・伊藤弘毅

 米英仏独など30カ国が加盟する西側諸国の軍事同盟「北大西洋条約機構(NATO)」の首脳会議が、スペインのマドリードで28日から始まりました。2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻を受け、NATOの安全保障に関する姿勢は今回、大きな転換点を迎えると言われています。12年ぶりに改訂される予定のNATOの「戦略概念」はどんな内容になりそうなのか。岸田文雄首相をはじめ、韓国やオーストラリアなどアジア・太平洋の首脳がなぜ、北大西洋の軍事同盟の会議に招かれているのか。欧州の政治・外交史や安全保障に詳しい防衛大学校の広瀬佳一教授に聞きました。

 ――今回のNATO首脳会議、見どころを教えてください。

 ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵攻を受けて、NATOは今回の首脳会議で、東西冷戦が終結した時以来の転換点を迎えます。今後10年ほどの戦略の方向性を提示する「戦略概念」を12年ぶりに見直しますが、これまでとは大きく違った内容になるでしょう。ウクライナ侵攻を受け、NATOの任務において近年、重視されてきた対テロといった「危機管理」などの比重が下がり、代わって、設立時の主目的だった加盟国の「集団防衛」が再び大きな焦点になるのは確実とみられます。

 また、ロシアをNATOにとっての明確な脅威と認定するのではないかと見ています。NATOはもともと、欧州における旧ソ連圏の軍事的脅威に対抗するために設立された軍事同盟ですが、後継のロシアを含めて戦略概念や共同宣言といった公式文書で「脅威」だと認定したことは、意外なことに東西冷戦の終結後、一度もありません。

 ――ロシアは2008年にジョージア(グルジア)と軍事衝突し、14年にはウクライナ領のクリミア半島を一方的に併合しています。それでも、これまでNATOはロシアに強い態度をとってこなかったのでしょうか。

 冷戦後、NATOはロシアに…

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この記事を書いた人
伊藤弘毅
アジア総局員兼ニューデリー支局員|アジア経済担当
専門・関心分野
南アジア、東南アジア、開発、エネルギー
ウクライナ情勢

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