6月上旬、金曜日の午後。
JR渋谷駅のハチ公前で、記者(30)はノートとペンを握りしめていた。
あたりは、行き交う人や、待ち合わせの人たちでごった返している。
スマホを見る若い女性に近寄り、聞いた。「あの、選挙って行ったことありますか?」
静岡県の会社員の女性(20)は、戸惑った様子だったが、これまで選挙に行ったことはないと教えてくれた。
「行かない理由は何ですか?」
ストレートに聞いた。
「分からないから、行かない方がいいと思って」
「分からないって、なにがですか?」
「社会そのものについて。ニュースも見ていないので」
ふだん見るのは芸能ニュースばかりだという。
では、社会のことが分かったと感じれば行きますか?
「どうですかねぇ…たぶん」
22日に参議院選挙が公示される。
毎回、問題となるのは投票率の低さだ。
選挙のたびに投票率は下がる傾向にあり、前回2019年の参議院選挙(抽出調査)は48・80%、昨年の衆議院選挙は55・93%だった。
国民の半数が参加しない選挙。
投票に行く人ばかりをとりあげていては、有権者の「声」を聞いていることにはならないのではないか――。
前回の参議院選挙では、年代別の投票率で最も低かったのは20代の30・96%。続いて10代の32・28%だった。
若い人たちのリアルな思いを聞いてみたい。そう考えて、渋谷の街角に立った。
取材で半数以上「投票に行かない」
記者が話を聞いたうち、はっきり「行く」と答えた人は6人。「たぶん」「特に考えていない」といった声も含めると「行かない」という人は9人だった。
投票しない理由を尋ねると、政治について「詳しくない」「分からない」「身近ではない」といった声が多かった。
東京都の大学4年の男性(21)は「投票に何のメリットがあるのか」と思い、ずっと棄権してきた。だが、昨年の衆議院選挙で初めて投票したという。
きっかけとなったのは大学のゼミ。「メディアと政治」をテーマに学んでいた。
たとえば、東京電力福島第一原発で処理水を海洋放出する計画について、漁業者らを中心に反対の声は今も根強い。必ずしも民意が反映されていないと思える現状があるからこそ、「民意に耳を傾ける代表を、自分たちが投票で選ばなければならない」と感じるようになったという。
「自分はたまたまゼミの影響で投票に行くようになったけど、そんなに政治に触れる機会ってないのでは? 行かない人がいても当然じゃないですかね」
ゼミでは投票率を上げるにはどうしたらいいかという議論もしたという。SNSを活用して著名人が政治について語るといった、若者が注目するような工夫が必要ではないかと考えたという。
「中途半端な状態で行くのは嫌」
一方、東京都の大学生の男性…
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