生理用品の配り方、臭いの悩み、日頃の備えは 女性目線で考える防災
大災害のあと、避難先で強いられる共同生活では、女性にしかわからない困難も少なくない。男性主体の避難所運営、生理用品の配り方、臭いの悩み――。集中豪雨が起きやすい時期を前に、被災経験のある防災士らがKBC九州朝日放送が企画した座談会に参加し、「女性目線」で避難生活のあり方や日頃の備えについて考えた。
豪雨に備える防災企画でKBCと協力
朝日新聞はKBC九州朝日放送(福岡市)と協力し、豪雨に備える企画を随時展開します。こうした企画はKBCの番組でも放送されます。
防災啓発のための講演活動を続ける熊本県和水町の防災士柳原志保さん(49)は東日本大震災の直後、母と2人の息子と宮城県内の体育館に身を寄せ、約2週間の避難生活を送った。
生理用品の支給を受けた時のこと、配布を担当したのは男性で、紙ナプキンを「公平に」1人一つずつ支給していた。
必要な人は一つでは足りない。女性にしかわからないことがあると感じ、「女性が配るとか、トイレに置いておくといった工夫が必要だった」と語った。
被災直後は、避難所の運営に違和感があっても「我慢して当然」と思い、意見を言えなかった。後に女性の民生委員の発案で意見箱が設置されたと聞き、「女性こそ避難所運営に参画し、気づきを反映していかなければいけないと感じた」。
災害時に役立つ下着を開発した会社社長の本間麻衣さん(44)は地震や豪雨といった災害後、女性から困りごとを聞き取ると「見た目や臭いに関するものが多かった」と語った。
「周りの目が気になり、避難所で下着を干せない」「尿漏れをしてしまい臭いが気になる」
そんな悩みに応えようと、少ない水で洗濯でき、周りから見えないように備え付けのバッグの中で干せる下着セット「レスキューランジェリー」を開発した。
熊本地震で臨時に開設された避難所にボランティアで入った際、スタッフの8割が男性だった。「女性のニーズをくみ取るのは難しいと思い、なるべく自分が声をかけた」という。
日頃の備えとして、柳原さんは子どもを連れて逃げることも念頭に、「懐中電灯より、両手が自由になるヘッドライトがおすすめ」と話す。普段持ち歩くポーチにも、災害に遭ったときのことを想定して除菌用のアルコールやポリ袋などを入れている。「毎日備えるのは苦しい。暮らしのなかでちょっとできることから始めてみて」と語った。
本間さんは自分と子どもたちのプライバシー確保のため、防災用品としてテントを用意しているという。新型コロナの流行後、自治体の指定避難所は仕切りを備えるようになったが、「指定避難所に入れるとは限らない」と指摘する。
災害に向けた心構えについて、2人ともコミュニケーションの大切さを強調した。
柳原さんは「そもそも、避難=避難所とは限らない。人の備えも大切」と語った。コロナ対策として自治体の指定避難所の定員が絞られ、地域の避難者を受け入れきれないケースも発生している。日頃から自宅周辺の危険について知人と話し、お互いに身を寄せることができるか話し合うことを勧める。「特に風水害では、早めに情報を得ることで選択肢が広がる」
本間さんは「具体的な想定を家族で共有することが大切」と語る。自治体のウェブサイトに載っている備蓄品のリストをチェックしたり、家族で落ち合う場所を決めたりすることが大事だと話す。
座談会に参加し、防災について学ぶ九州産業大4年の戸田優香さん(21)は取材に対し、「生理のことなどは普段でも話しづらいので、災害時はなおさらだと思う。女性が防災担当を担うことや、多様なニーズを把握しておくことの大切さを感じた」と振り返った。自らの備えについては「他人と同じものが必要とは限らない。自分の生活のなかで準備しようと思った」と話した。
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座談会は30日のKBC番組「シリタカ!」で放送されました。朝日新聞はKBCと協力し、豪雨に備える企画を随時掲載します。
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