ピタゴラスイッチ、装置づくりの舞台裏 いつも何回撮り直す?

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田渕紫織
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 NHK・Eテレの「ピタゴラスイッチ」が20周年を迎えました。身近なモノを使ってからくりを作り、球をゴールまで転がす「ピタゴラ装置」など、大人もついつい見入ってしまいます。どんな人たちが、どうやって作っているのでしょう。メンバーに聞きに行きました。

 ピタゴラスイッチの起源は、20年前の慶応大学の研究室にさかのぼる。

 研究室の指導教員は、佐藤雅彦さん。電通出身で、Eテレの幼児向け番組「おかあさんといっしょ」の中で流れる歌としてヒットした「だんご3兄弟」などで知られるクリエーターだ。当時は慶応大環境情報学部の教授だった。

佐藤雅彦さんの研究室が起点

 佐藤さんは、研究の過程で生まれたテーマを課題の形にして佐藤研究室の学生に出していた。その解答のいくつかが、現在のピタゴラスイッチの原型になった。

 例えば、「制約のある表現で、いかに面白くハッとさせるか」という課題。ここから、ピタゴラスイッチの1コーナー、「10本アニメ」が生まれた。棒のキャラクターが活躍するコーナーだ。

 番組になるきっかけは、佐藤さんがNHKのディレクターから「従来の知識を教える幼児教育番組ではなく、考え方を伝える番組を佐藤研と一緒に作れないか」と提案されたことだ。すでに作っていた直線だけを使ったアニメーションなどに新たな企画を加えて束ね、ひとつの番組にすることになった。

 大半のコーナーは佐藤さんの監修のもとに研究室のメンバーが作り、NHK(現在はNHKエデュケーショナルが担当)が全体の編集や仕上げをした。

 研究室の学生たちは、卒業後も、「ユーフラテス」という制作ユニットを立ち上げ、制作を続けた。

 その後、佐藤さんは東京芸術大に移った。最近10年ほどは、ユーフラテスの6人と、東京芸大の佐藤研究室の院生らで作っている。中心メンバーは20年間、変わらない。

 ピタゴラスイッチと言えば、手作りのからくり装置に球を転がしてゴールをめざす「ピタゴラ装置」が名物コーナーだ。これまでに250ほどの装置を作った。

学生時代は装置づくりの合宿も

 どれぐらいの時間をかけて作るのか。

 学生時代から制作に携わる「ユーフラテス」の山本晃士ロバートさん(42)によると、20年前、メンバーが学生だった当初は、装置を作るために合宿をしていた。NHKのスタジオに朝から晩まで4日間貼り付いて、1装置を2~3人で作った。

 現在は合宿という形にはしていないが、年1~2回、4日間かけて集中して作る。今年のゴールデンウィークにも撮ったという。

 装置は毎回いちから作るため、当然、思うように球が動かず、撮り直しを重ねる。山本さんいわく「いつも平均して、30テイクぐらいはいく」そうだ。

 メンバーの貝塚智子さん(4…

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