コロナに襲われた共通テスト初年度 入試センターが使った「奥の手」
大学入試センターの理事長を退任した山本広基氏に聞く3回シリーズの2回目は、コロナ禍に見舞われた初の大学入学共通テストと、問題流出事件が起きた今年の共通テストについて振り返ってもらいます。
コロナ、「天変地異のような事態」
共通テストへの記述式問題導入と英語民間試験の活用が2019年の終わりに相次いで見送りになったことで、初回となる21年の共通テストは、大きな障壁がなくなりました。ただ、20年になって間もなく、新型コロナウイルス感染症の拡大が起きました。天変地異のような事態ですね。
今年の共通テストでは女子受験生による問題流出も発覚し、社会に大きな衝撃を与えました。「センターに匿名の電話があったんです。ただ…」。記事後半では、山本氏が問題発覚の経緯を語ります。
文部科学省幹部とのやり取りで、困ったのは試験問題。大学入試センターは20年6月末に公表した共通テストの実施要項で、1月中旬の「第1日程」、下旬の「第2日程」、2月中旬の「特例追試」と、3回にわたってテストを実施する異例の対応をとることになりました。
第2日程は、一斉休校もあったため学習の遅れが出ており、これに対応するために設定。さらに、第2日程もコロナにかかるなどして受けられなかった人に、特例追試も用意しました。
文科省との事前の協議では、私から「3回も試験やるなんて無理ですよ」という話をした。「問題が用意できないです」って。例年、センターは本試験と追試の2回分しか問題を作っていませんから。
でも文科省幹部は、第2日程の試験・解答用紙を「数万単位で用意してほしい」と。さらに、3回目も準備してほしいとも言う。
どうするか。「実は、緊急対応問題というのが、ないこともないけれども」と伝えました。
異例の3回テスト 緊急対応問題とは
緊急対応問題というのは、通…
- 【視点】
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