幼保無償化めぐる国会発言に反発の声 教育経済学者に真意聞く

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聞き手・岩沢志気 田渕紫織 中井なつみ
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 保護者の所得にかかわらず、3~5歳児の保育料を無償化する「幼児教育・保育の無償化」について、国会での議論が話題になっています。政策の優先順位を問い、「財政状況が厳しいなか、(無償化は)高所得者世帯ほど手厚い再分配になっている」と述べた、慶応大学の中室牧子教授(教育経済学)に対し、「所得制限反対」などの声がツイッターや保護者らから上がっています。中室教授に発言の真意を聞きました。

 ――予算委員会の中央公聴会での発言に対する、ネットなどでの反応をどう見ていますか。

 教育経済学者として、子育て世代に対する支援は将来の日本にとっても欠かせないものと思っており、無償化が不要だと発言したつもりはありませんでした。

 「幼児教育無償化は高所得世帯ほど手厚い再分配になっている」と発言したことは事実ですが、「幼児教育無償化に所得制限を導入すべきだ」とは発言していませんし、そのような意図でもありません。必要とする人に必要なだけの支援を迅速に届ける仕組みに改める必要があるというのが言いたかったことです。加えて、政策は、「優先順位」が大切なのです。

 ――具体的に、優先するべき政策は何でしょうか。

 待機児童解消と「保育の質」の保障ではないでしょうか。2017年に幼児教育無償化が議論され始めたころから、無償化よりも待機児童の解消が優先されるべきだと考えていました。加えて、幼児教育の「質」の担保も重要です。これらが十分になされたなかでの無償化であれば適切だと思いますが、順番が逆だったのではないかと思います。

 ――なぜ、「保育の質」が重要なのでしょうか。

 質の高い幼児教育は、将来、社会全体にとってプラスの影響を与えることが研究からも明らかになっています。カナダのケベック州では、1997年に保育料の大幅な値下げが行われましたが、保育料の引き下げで利用者が増え、保育の質が低下したと考えられています。ある研究によれば、子どもたちが10~20代になったときの非認知能力(やる気や集中力、協調性など、点数化しにくい能力)、健康、生活満足度、犯罪関与にマイナスの影響を与えたそうです。日本で行われた幼児教育の無償化が、カナダの二の舞いとならないよう、幼児教育の質を高める政策が重要だと思います。

合意形成どうすれば?

 ――現在の日本でも、保育の質について「ばらつきがある」と発言していました。

 私たちは現在、アメリカで開…

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