古文書は虫のタイムカプセル 虫のミイラが教えてくれる昔の生態系

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竹石涼子
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 古文書に挟まれてぺしゃんこになったクモや昆虫などの死骸や抜け殻から、当時の虫の生態がわかる――。古文書のクリーニングに携わっている女性研究者が、そんな研究ができることを示した。名付けて「古文書昆蟲(こんちゅう)(昆虫)学」。幻と呼ばれるクモを発見したり、虫の分布の変化が分かったり。古文書が、当時の自然を閉じ込めた貴重なタイムカプセルだとわかってきた。

 鳥取藩の大庄屋だった家の土蔵に眠っていた江戸時代の古文書。鳥取県立博物館の任期付き専門職員だった深川博美さんは2008年、運び込まれた大量の古文書を清掃する過程で、中にも外にもたくさんの虫の死骸がついていることに気づいた。

 ふつうなら、ほこりと一緒に捨てられてしまう死骸や抜け殻たち。でも、小さなころから虫が大好きで、大学でゾウムシも研究した深川さんは、よくいるシミやシバンムシではなく、クモの抜け殻がたくさん出てきたことに驚いた。研究者が集まった地元の会合で、クモに詳しい鳥取大の鶴崎展巨(のぶお)教授(現・名誉教授)に聞いた。「抜け殻から種がわかりますか」

 鶴崎さんは「送られてきた試料を見て驚いた」。ガラスの小瓶に入った抜け殻は、左右に4個ずつある目が逆三角形に並ぶ特徴的な配列。採集記録が極めて少なく幻と言われるイヨグモに間違いなかった。

 鶴崎さんによると、イヨグモは、1913年に愛媛県で見つかったことから名付けられた。海外では、米ニューヨークで発見されたとの報告が1847年にあり、交易とともに世界中に広がったとみられるが、ここ1世紀は国内外とも採集記録が少なく、詳しい生態はわからないままだった。

 深川さんは1年かけ、どんな…

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