NATO拡大の内幕は? 元米政府高官に聞く ウクライナ危機の深層
軍事圧力を強めるロシアの最大の要求は、北大西洋条約機構(NATO)の不拡大です。旧ソ連のウクライナなどを加盟させない確約を求めています。そもそも、NATOはなぜ拡大の道を進んできたのでしょうか。ロシアとの対立を招く懸念はなかったのでしょうか。1990年代から米政府高官として対ロシア政策に関わり、駐ウクライナ大使も務めたスティーブン・パイファー氏に聞きました。
――現在のウクライナ情勢をどうみますか?
この2週間での新たな要素は、ロシア軍がベラルーシにも展開したこと。ウクライナへの脅威が増すとともに、ポーランドやラトビア、リトアニアにも近づいてNATO加盟国に緊張を生んでいます。
ロシアの主要な要求は三つあります。一つは、NATOを拡大させないこと。これは実現不可能です。二つ目は、1997年以降に加盟した国から部隊や兵器を撤去すること。これも難しい。三つ目は、ウクライナに攻撃的ミサイルを置かないこと。これは米国も「軍備管理や透明性については話す用意がある」と。ただ、ロシアは今のところ「それでは十分ではない」と言っているようです。
――最近、ウクライナを訪問したそうですね。現地の状況は?
緊張はしているが、パニックではない。彼らに聞けば「クリミア半島併合のあった8年前から、ロシアの軍事的脅威にさらされている」と言うでしょう。そして軍事侵攻があれば「我々は戦う」と決意を固めています。
世論調査によっては人口の3~5割が武器を持って戦う意思を示している。虚勢も入っているだろうが、25万人のウクライナ軍に加え、40万人の退役軍人の多くは武器を取る。民間人でさえ「私は銃を持つ」と言うでしょう。
――それはロシアの判断に影響するでしょうか?
クレムリンが正しく現状を理解するといいのですが。1カ月ほど前にモスクワで、「ロシア軍がウクライナに侵攻すれば解放者として歓迎される」というストーリーを耳にしました。しかし、実際にはそうはいきません。
ロシア国民はいま、プーチン大統領を支持しているようです。ロシア人は強いリーダーが好きで、彼は「ロシアを守るために立ち上がる」と言う。だが侵攻してロシア兵が遺体袋に入って戻って来るのを見ても支持が続くかは分かりません。
――本当に軍事侵攻は起きるでしょうか?
プーチン氏が最終的には、侵…
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- 【視点】
冷戦後の1993年、留学していたオックスフォード大学におけるセミナーの緊迫した一コマ。ラルフ・ダーレンドルフ、ティモシー・ガートン=アッシュがポーランド含めたNATOの東方拡大を主張するのに対し、ウィリアム・ワォレスは、鉄のカーテンをただ
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