馬毛島の基地整備計画、地元市長の口から消えた「不同意」

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具志堅直 成沢解語 奥村智司
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 鹿児島県西之表市の無人島・馬毛島への米軍訓練移転と自衛隊基地整備の計画をめぐり、西之表市の八板俊輔市長は3日、防衛省岸信夫防衛相と面会し、基地整備を前提に、国との協議の場を設置し、米軍再編交付金などで「特段の配慮」を求める要望書を提出した。反対を続けてきた地元首長が歩み寄る姿勢を示したことで、曲折を経てきた馬毛島の計画が大きく進む可能性がある。

 岸田政権は昨年末、2022年度政府予算案に「馬毛島基地」施設整備費として3183億円(後年度負担を含む)を盛り込み、計画を正式決定。1月7日の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)では、岸氏が「早期の整備に向けて政府全体として努力していく」と表明。米側も歓迎する意向を示し、両国で推進する方向で一致した。

 政府決定を受けて、八板氏は要望書で「問題が新たな段階に進んでいる」と表明。1月に区長会や商工会など市内の計51団体から意見聴取し、再編交付金への期待や、基地整備に伴う住民の安心安全を担保するための国との協議の場を求める声があったと伝えた。

 市への米軍再編交付金の交付や自衛隊員の居住などにも「特段の配慮を要望する」と訴え、米軍訓練移転や自衛隊基地整備の受け入れを前提に国との交渉を進める姿勢を鮮明にした。

 これに対し、岸氏は「市民の不安や懸念が協議の場を通じて解消されるよう努力していく。再編交付金なども最大限配慮するよう検討していく」と応じ、「地元の声にしっかり耳を傾け、速やかに事業を進めていきたい」と力を込めた。

 面会後、八板氏は記者団に「現実的な対応によって市民の不安を解消する必要がある」と強調した。計画への賛否を問われると、「しかるべき時期に示す」と留保する一方、「私の考えは変わらないが、市民の代表たる市長として住民の分断を助長することはあってはならない」と述べた。

反対派「惑わされず」、推進派「半歩前進」

 鹿児島県西之表市の八板俊輔市長は馬毛島の計画への「不同意」を訴えてきたが、3日の岸信夫防衛相との面会で、そうした言葉を口にすることはなかった。終了後、報道陣から計画への賛否を繰り返し問われたが、表情をこわばらせて「しかるべき時期に示す」「要望書に書いたことがすべて」などと明言を避けた。

 八板氏は約1年前の市長選で市民団体「馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会」と当選後も「不同意」を継続するとの協定を結んだ。団体は3日、計画反対の要請行動で上京中だった。山内光典事務局長は「防衛省の土俵で話し合いを進める必要はない。交付金に惑わされず、同意しない態度を貫いてほしい」と述べた。

 一方、計画推進の政治団体「西之表市と馬毛島の未来創造推進協議会」は、八板氏ら市側に賛成に転じるよう促してきた。団体事務局長の杉為昭市議は「『不同意』を事実上引っ込めて『中立』に寄った。半歩前進」と受け止める。その上で「意思表示せずに、多くの交付金や隊員駐留を求めるのは虫がよすぎる。しっかり賛意を示さなければ」と注文を付けた。

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