第7回ワシントンまで乗っ取ったボーイング 独占テコ、安全規制も骨抜きに

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ワシントン チャタヌーガ=江渕崇

 2018年10月5日、米ホワイトハウスの大統領執務室。運輸長官ら関係者に見守られながら、当時の大統領ドナルド・トランプが1本の法律にサインした。

 「18年連邦航空局(FAA)再授権法」

 FAAが新型航空機の安全性などをチェックする「認証」の手続きをめぐり、これまで以上にボーイングなどメーカー側が主導権を握れるようにする内容が含まれていた。ボーイング側のロビイストが米議会を回って働きかけ、実現したものだった。

 「米航空産業がグローバルに競争できるようにし、また製品をスケジュール通り市場に出せるようにするため、認証プロセスを合理化する」

 FAAは法改正の狙いをそう説明する。メーカーに可能なことはできるだけ委ね、FAAはとりわけ重要な点に集中することで、認証をスピードアップしつつ質も高める、との理屈である。

 実際に認証にあたるFAAの安全検査官らでつくる労働組合PASSは、これに反対し続けた。「FAAがただのゴム印に成り下がる」「飛行機が落ち、人が死んでからでしか介入できなくなる」。しかし、ワシントンでのボーイングの政治力を前に、現場の検査官は無力だった。

サインの3週間後に墜落事故

 ボーイングの最新鋭機737…

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この記事を書いた人
江渕崇
経済部次長|国際経済担当
専門・関心分野
資本主義と民主主義、グローバル経済、テクノロジーと社会