あんた全然分かってないね 烏丸せつこ、出演作と映画記者をばっさり

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編集委員・石飛徳樹

 40年前のデビュー当時から「物言う女優」として知られていた烏丸せつこ。その舌鋒(ぜっぽう)は健在どころか、鋭さを増している。

こんなにツッコミどころ満載の映画はないよ

 インタビューの第1ラウンドで、いきなりKOパンチが飛んできた。

 「あんた、こういう映画が好きなの? 全然分かってないね」

 40年連れ添った夫婦を描いた「なん・なんだ」についての感想を求められ、「すごく面白かったです」と答えたのだが、そこでまさかのカウンターを食らってしまった。

 彼女が演じる美智子は、神奈川の古い団地で、夫の三郎(下元史朗)と2人暮らしをしている。ちょっと外出した美智子だったが、その夜、三郎の携帯に、京都府警から「美智子が交通事故に遭った」と連絡が入る。なぜ京都に? 調べてみると、美智子は、奈良で病院を経営する甲斐田(佐野和宏)と密会していた。しかも長年にわたって……。

 「こんなにツッコミどころ満載の映画はないよ。そもそも美智子は、男から見た女なんだよ。しかもすごく古い。だから日本映画は駄目なんだ。韓国映画にかなわないんだよ」

 浮気に走ったきっかけを美智子が語る場面がある。かつて彼女の方から誘った時に夫が拒絶したことがあった。「あなたが応えてくれなかったから、私、死のうと思った」と。

 「はあ? なんで? 『心と体って、簡単には切り離せない』って、キモい。心と体が一緒じゃなくても女はいろんなことが出来るんだよ。あのセリフ、ゾワーッとしたわよ。気持ち悪いから変えようよ、と言ったけど、聞いてもらえなかった」

演じる美智子と正反対の……

 三郎は腕のいい大工だが、生活は貧しい。一方の甲斐田は金持ちの医者だ。「この構図が古いんだよ。この変な医者、若い頃に美智子を捨てて、病院を選んだんだよ。そんな男のところに誰が行くの? 他の男に走ることはあっても、こいつだけは願い下げだよ」

 退院した美智子は京都で三郎と甲斐田と3人で対峙(たいじ)する。その時、美智子は「どちらとも別れないから」と言い放つ。「あんたはこの映画の一体どこが好きなの?」と聞かれたので、「あの決然とした言葉が格好いいと思いました」と答えた。

出演作に容赦のない烏丸せつこさん。タジタジの記者と映画にさらにダメ出しを続けつつ、言いっ放しでは終わりませんでした。

 しかしというべきか、案の定…

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