楕円球だけを追わぬ広島・尾道高 花園16強から東北大、名古屋大へ

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佐藤祐生
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 ラグビーの第101回全国高校大会が27日、大阪・花園ラグビー場で開幕する。

 16回目出場の尾道(広島)は、部員の約6割が国公立大などを目指す「最難関コース」か「難関コース」に所属する。

 全国16強に入った昨年度、東北大や名古屋大に現役合格した部員もいる。

 「高校生でいる間に欲張れるなら、欲張った方がいい」と指導者は言う。

 ラグビーも、勉強も、と高いハードルに挑んでいる。

 今月中旬、尾道の全体練習は授業を終えた午後5時ごろから始まった。

 「アタックの選択肢はいろいろある。全部使えるように」

 「要求は高く持って。外からも声を出してやろう」

 もう外は暗い。実戦形式の練習では部員同士で声をかけ合い、盛んにコミュニケーションをとっていた。

 全体練習は約2時間。その後は、自主練習に励む部員もいれば、寮に戻って勉強する部員もいる。

 彼らが追っているのは楕円(だえん)球だけではない。

 花園出場は今大会で15大会連続16回目。これまで4強入りが1度、ほかに8強入りも1度とラグビーで力を示す一方、勉強でも「全国レベル」にこだわる。

 部員76人の約6割が国公立大などを目指す普通科の「最難関コース」か「難関コース」に所属する。普通科にはスポーツコースもあるが、部員は在籍していない。

 勉強もラグビーも高いレベルで両立できることが魅力となって、熊本や千葉、埼玉など全国から部員が集まってくる。いまは約8割が県外の出身だ。

 主将のフッカー、前川陽来(はるき)(3年)は兵庫から進学してきた。

 「勉強もラグビーもどちらもできるところに魅力を感じた」

 「文武両道」は2002年の創部以来、掲げてきたテーマだ。花園で16強まで進んだ昨年度の3年生のなかには、東北大や名古屋大、大阪教育大などに現役合格した部員がいる。部員が東大に現役合格したこともある。

 OBの田中春助(しゅんすけ)監督(33)も文武両道をめざして入学を決めた一人だった。

 「二兎(にと)を追っていないと二兎は得られない。高校生でいる間に欲張れるなら、欲張った方がいい。そもそも僕が欲張りなのでね」と笑う。

 創部から17年間率いて礎を築いた梅本勝・前監督(現在は岡山・倉敷の監督)の後任として19年1月、コーチから監督に就いた。

 「二兎を追う」姿勢を鮮明にするため、練習時間などに手を加えた。重視したのは、効率化と主体性だ。

 もともと平日のうち週1日はオフで、早朝練習と放課後練習を両方行うのは2日。残る2日は朝練のみだった。

 これをさらに圧縮した。

 早朝と放課後ともに練習する日を1日に減らし、残る3日は早朝か放課後だけにした。

 朝練の開始も午前5時半から6時半に後ろ倒しして2時間を1時間に短縮、放課後の全体練習も2時間半から2時間にした。

 「睡眠不足だと体も大きくならないし、授業や練習に対する集中力が下がる」と考えたからだ。

 自由な時間が増えた。自主練習をしてもいいし、休んでもいいし、勉強をしてもいい。その使い方は部員に委ねられている。

 練習時間を短くした分、密度…

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