自己責任論、顔認証…「相棒」全部見た記者が振り返る22年

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上田真由美
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 いまや国民的刑事ドラマとなった「相棒」(朝日系、水曜夜9時)が始まったのは2000年。シーズン20作目までの地上波376話とスピンオフも含めた劇場版6作、すべてを見てきた記者には、相棒の歴史は、そのまま社会を映しているように見える。よりすぐりの30エピソードを通じて、振り返る。

 最初の放送は21世紀を目前にした2000年6月の「刑事が警官を殺した?」。土曜ワイド劇場の2時間ドラマだった。先に水谷豊寺脇康文というキャストが決まっており、制作チームから請われて脚本を任された輿水泰弘さんは「名探偵もの、しかも王道のシャーロック・ホームズとワトソンのようなコンビもの」を目指したと話す。

 物語は、熱血漢の捜査1課刑事、亀山薫(寺脇)が居酒屋指名手配犯の人質になってしまうことから始まる。とっさの機転で助けたのが、頭脳明晰(めいせき)で偏屈な警視庁の人材の墓場「特命係」の杉下右京(水谷)。この事件で亀山は特命係に左遷され、ここから名コンビが生まれた。ミステリー好きだが、それまでコメディーを書いてきて刑事ものは初めて手掛けたという輿水さんらしい、コミカルでテンポのいい展開だった。

 好評を得て、01年11月に土曜ワイド劇場の第3弾として放送された「大学病院助教授墜落殺人事件!」では、人間ドラマの背景に安楽死をめぐる葛藤を織り込んだ。

 02年秋からついに連続ドラマが始まると、メインライターの輿水さんだけでなくほかの実力派の脚本家たちも加わり、社会問題を取りこみながら、コメディーからシリアスまで多様な作品を生み出していく。

 03年の「命の値段」では事故死した2人の同い年の青年の逸失利益の差に切り込み、04年の「ピルイーター」では主要登場人物の同性愛、05年の「異形の寺」ではトランスジェンダーの生きづらさを描いた。

裁判員制度開始の2年前に

 09年の裁判員制度開始に先駆けて、07年の「複眼の法廷」は裁判員制度を取り上げた。誠実に評議に取り組もうとしながらも揺れ動く裁判員たちや過熱する報道を立体的に活写し、もちろん結論のどんでん返しでも楽しませてくれる。ここでも緻密(ちみつ)な推理を見せる右京を演じた水谷は「これ(裁判員制度)はどういうことなのか、そのことによって人がどうなるんだろうかということを予測してつくったものとうかがいました」と話す。

 初めての劇場版も、重たいテ…

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