第4回「世界で一番イケてる独裁者」の手法 ビットコイン買い時もツイート

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 「今が買い時だ」。エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領はビットコイン(BTC)の価格が下がると、300万人を超すフォロワーのいるツイッターアカウントを通じ、国民にこう呼びかける。時には、エルサルバドル政府が「押し目買いをした」と発信する。そして、こうした投稿には、支持者たちの喝采するリプライが大量につく。

 6月5日、ブケレ氏はBTCを法定通貨にすると発表した。アメリカ・マイアミであったビットコインの関連イベントにビデオで出演し、「来週、法定通貨にするための法律を国会に送る」と表明したのだ。直後に、自身のツイッターに、この動画とともに「未来へようこそ!」と投稿した。

 BTCの法定通貨化には、世界銀行国際通貨基金など国際機関だけでなく、国内でも野党などからリスクが大きいなどと批判が続いている。そもそも、世界初の試みだ。導入には、慎重な検討が必要だ。しかし、法案はブケレ氏の発表から3日後の6月8日に国会で可決された。そして、3カ月後の9月7日に法定通貨となることが決められた。

 「ビットコインの法定通貨化なんて、それまで一言も言及されてこなかった。それなのに国会での議論は皆無。それだけではありません。BTCについては、分からないことばかりなんです」。エルサルバドルで民主化や政府の透明性確保のために活動するNGO「アクシオン・シウダダナ」のエドゥアルド・エスコバル代表は憤る。「例えば、チボのATMの発注プロセスがどう行われたのか。入札や見積もりがあったのか。誰が受注したのか。何もわかりません。政府はBTCに関する投資総額を2億5千万ドルと発表しましたが、その内訳がどうなっているのかさえ、わからないんです」

実業家の息子に生まれたブケレ氏は12年に30歳でサンサルバドル近郊の小さな街ヌエボ・クスカトランの市長になりました。その後、37歳で「ミレニアル世代」の大統領になるまでに、いったい何があったのでしょうか。記事後半で紹介します。

「民主主義、政党や議会への不満が広がっていました」

 ブケレ氏と言えば、大統領に就任した2019年の国連総会で、壇上で自撮りしたことが有名だ。そのブケレ氏の政権で何が起きているのか。

 この政権について理解するには、エルサルバドルの、ここ30年の歴史という背景を知るべきだとエスコバルさんは言う。

 エルサルバドルでは東西冷戦…

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