牛肉食べなければ森は守られる? アマゾンに行って見えた問題の根源

有料記事

岡田玄

 目の前を歩く牛は、あばら骨が浮き出ている。本当に食用として育てられているのか、疑問が湧く。

 アマゾンの南西部を占めるブラジル・ロンドニア州。州都ポルトベリョ郊外を車で走ると、熱帯雨林を伐採してつくられた牧場が広がっていた。広大な敷地にぽつぽつと、やせこけた牛がいた。

 アマゾンは世界の熱帯林の半分を占める。貴重な森が切り開かれ、牧場にされていることに、気候変動対策が不十分だとして世界から批判のまなざしが向けられている。

 ブラジルは牛肉の輸出量で世界一を誇る畜産大国だ。だが、目の前の牛は貧相だ。すこぶるうまいと評判の隣国アルゼンチンの牛と比べるまでもなく、同じブラジルの南部で見たでっぷりと太った牛と比べても、アマゾンの牛は、肉としての商品価値が低そうだ。

ワールドインサイト

世界各地に根を張る特派員が、歩いて、見て、聞いて、考えました。ひと味違う視点で国際ニュースを切り取ります。ニュースレター「ワールドインサイト」は、有料会員の方にオリジナル記事をメールで先行してお届けします。

 牛肉生産のためにアマゾンが伐採されている――。そんな報道が欧米ではなされてきた。アマゾンを守るために、牛肉を食べるのをやめようというキャンペーンもある。確かに、やせた牛を見ていると、「貴重な熱帯雨林を伐採した結果がこれか」と、怒りとむなしさがこみ上げてくる。

 でも、とも思う。舌の肥えた先進国の人々に、この牛が受け入れられているのだろうか。

■牛を育てる本当の目的…

この記事は有料記事です。残り4839文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トク】締め切り迫る!記事が読み放題!スタンダードコース2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
岡田玄
東京社会部
専門・関心分野
中南米、沖縄、移民、民主主義、脱植民地主義
  • commentatorHeader
    井本直歩子
    (元競泳五輪代表・途上国教育専門家)
    2021年11月11日23時17分 投稿
    【視点】

    「地球の肺」と言われるアマゾンの森林伐採に関する非常に多くの情報が詰まっていて、とても読み応えがありました。ちょうどCOP 26で世界の100ヶ国以上の首脳たちが、2030年までに森林破壊を完全にストップさせるプレッジに署名し、そこにブラジ

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    露木志奈
    (環境活動家)
    2021年11月12日17時13分 投稿
    【視点】

    私もインドネシアのボルネオ島の熱帯雨林に数週間滞在したことがあるが、熱帯雨林は、地球上の森の種類の中でも特に重要で、別名:地球の肺 とも言われるくらい二酸化炭素を吸収してくれる存在だと聞きました。そんな場所を金鉱探しや農地開発のために破壊さ

    …続きを読む