コロナで受診控え影響か、がんの診断9.2%減少 死亡率の増加懸念

熊井洋美
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 2020年にがんと診断された人が前年より9・2%減ったとする調査結果を、日本対がん協会などが4日、発表した。新型コロナウイルス感染症の影響で、がん検診の受診者が減ったことなどが影響したとみている。主な5種のがんで約4万5千人の診断が遅れたと推計され、今後は進行したがんが見つかるケースが増えて、患者の予後の悪化や死亡率の増加が懸念されている。

 調査は、日本対がん協会のほか、日本癌(がん)学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍(しゅよう)学会の3学会が共同で実施。がん診療の拠点病院など486施設を対象に、胃、肺、大腸、乳、子宮頸(けい)部の各がんの診断への影響を尋ね、105施設から回答を得た。回答率は21・6%で、回答施設は北海道・東北15、関東25、中部・北陸19、近畿16、中国・四国12、九州・沖縄18だった。

 その結果、20年のがん診断件数は8万660件で前年比9・2%減。がん種別では、減少幅が多い順に胃がん(13・4%減)、大腸(10・2%減)、乳(8・2%減)、肺(6・4%減)、子宮頸部(4・8%減)だった。胃がんの診断が特に減っているのは、口や鼻から内視鏡を入れて診断や治療をすることが多いためとみられる。会見した3学会のコロナ対策ワーキンググループ長、寺島毅・東京歯科大教授は例年のがん診断者数と今回の集計を踏まえ、「五つのがんで、全国で4万5千人ほどの診断が遅れていると推定してもいいのではないか」との見方を示した。

 緊急事態宣言が出るなどして、昨年4月以降はがん検診や各種健診が一時中止され、その後も受診や通院控えが続いた。日本対がん協会のまとめによると、20年のがん検診の受診者は、前年に比べて約3割減っていた。協会は例年、年間約1100万人にがん検診を実施し、約1万3千人のがんが見つかっている。

 今回の調査では、早期で見つかるケースの減少が目立ち、胃がんの1期は17・4%減だった。進行した状態で見つかるケースも減ったが、減り幅は多くのがんで比較的小さかった。宣言が全国に出ていた昨年5月は、診断件数の減り幅が顕著だった。日本対がん協会の垣添忠生会長は「がんは初期のうちは無症状であり、診断が減ったのは受診が減ったことの反映だ。対がん協会の検診受診者は戻りつつあるが、この結果を重く受けとめていかないといけない」と話した。(熊井洋美)

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