震災10年「変われない日本」 脱原発デモ参加者の思い

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西本秀
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 東日本大震災から10年余。東京電力福島第一原発の事故を機に広がった脱原発デモは、この間次第に下火となり、原発の再稼働がじわじわと進んできた。31日投開票の衆院選を前に、デモに参加した市民はいま何を思うのか。

 政府が新たなエネルギー基本計画を決めた22日金曜の午後5時過ぎ、東京・永田町の首相官邸前。家路を急ぐスーツ姿の人々が行き交うほか、人影は少なかった。震災後、この場所で毎週金曜夜に続いてきた脱原発デモは、今年3月に休止されたままとなっている。

 「結局、何も変えられなかったのかなあ」。東京都小平市で食肉販売業を営んできた永井忠さん(76)は自宅でため息をつく。震災翌年の12年3月、官邸前でデモが始まると「地震は待ってくれない」と記した手製の看板を抱え、電車を乗り継いで官邸前に通った。体力的にデモへの参加が難しくなり、地元でエネルギー問題の勉強会を続けてきたが、それもコロナ禍で打ち切りとなった。

 岸田政権が今月22日に閣議決定したエネルギー基本計画は、温室効果ガスの抑制を理由に、30年度の発電量に占める原発比率を従来の目標同様20~22%とし、「必要な規模を持続的に活用していく」とした。永井さんは「あれだけの事故が起きても方向転換せず、小型原子炉の活用案まで語られ始めた。選挙戦でも、原発はほとんど話題になっていない」と嘆く。

 震災翌年の朝日新聞社の世論調査で「原子力発電を段階的に減らし、将来はやめることに賛成」と答えたのは70%。首相に声を直接届けようと、ツイッターなどSNSを通じて数千、数万人規模の市民が毎週集まり、官邸前は脱原発デモの象徴的な場となった。

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 当時は民主党政権。野田佳彦

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