「たくさんの人に思われていた」オリックス・西浦颯大、涙の引退

大坂尚子

 「あれだけファンの方が来てくれて感謝しかない」

 9月28日、大阪市此花区のオセアンバファローズスタジアム舞洲。プロ野球オリックスの西浦颯大外野手(22)は引退セレモニーを終え、思いを述べた。

 ファンを大切にする選手だ。2019年の春季キャンプでは、サインに並んだ小学3年の少年の名を呼び、「キャッチボール、覚えている?」と話しかけた。

 前年の2軍戦後の野球教室で、その子とキャッチボールをしたことを覚えていたのだ。「にっしー、にっしーって近寄ってくれたんです」。思い出を語りはじめた。

 「ファンは大事。(今回は)話しかけてきてくれなくて……。1軍で活躍して、一人でもそういう子が増えてくれれば」とうれしそうに続けた。キャンプ中、最後の一人までサインする姿も見かけた。

 昨年11月、股関節からひざにかけて激しい痛みを伴う国指定の難病「両側特発性大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)症」を患っていることを公表した。

 両足を手術し、リハビリを続けたが、病状が悪化し、今夏に引退を決意した。

 引退を発表した今月24日、SNSに届いたファンからのメッセージを翌朝まで読み続けた。「こんなたくさんの人に思われていたんだなと思ったら、すごくうれしかった」

 この日の広島戦の九回、慣れ親しんだ背番号「00」のユニホームで、ゆっくり歩いて中堅の守備についた。守ったのはたった1球。それでも「自分がしてきたファインプレーがよみがえって泣いちゃいました」。

 ファン、チームメートの拍手を聞きながら、涙をこらえ、ベンチに戻った。

 今後、どうするかは決めていない。「心の中では夢はずっとプロ野球選手。現実的には無理だけど、でも野球には携わっていきたい」

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明徳・馬淵監督「復活すると思っていたけど」

 恩師である高知・明徳義塾高の馬淵史郎監督からは「お前の身体能力なら復活すると思っていたけどな。残念やな」と連絡があったという。

 自身は4度、甲子園の土を踏み、2年夏の甲子園では満塁本塁打を放ったが、一番の思い出は入学直後の練習試合。初めての遠征で、左腕のカーブを捉え、右翼席に飛び込むサヨナラ弾にした。「それで自信がついた。ずっと印象に残っています」と懐かしそうに振り返った。(大坂尚子)