RSウイルス大流行で開園、コロナで休園、なぜ? 小児科医の視線
新型コロナウイルスの「第5波」で子どもの感染が増え、保育所や学童保育でも休園や休所が相次ぎました。私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。小児科医で感染症に詳しい森内浩幸・長崎大教授に聞きました。
――子どもの感染が増え、保育園や学童保育の現場から「これ以上どうすれば」という声があがっています。
「保育の現場の方が学校より感染対策は大変だろうと思います。小さな子どもだとマスクを安全に着用できません。また、学校と比べると保育所や学童保育はどうしても密になりやすい。症状がある場合は登園しないことも大事ですが、子どもが元気いっぱいだけど熱を測ると37・5度を超えている場合などは、仕事をなかなか休めないと、つい預けてしまうこともある。やることはわかっているけど、徹底しにくいところが、保育現場の難しさだと思います」
――子どもの感染が増えているのは、感染力の強いデルタ株の影響があるのでしょうか。
「それもありますが、もともと変異株が出る前から子どもの感染が徐々に増えていたのです。流行の当初、20歳未満の感染は人口割合から見ると非常に少なかった。理由の一つは、ウイルスが私たちの細胞に感染する際に必要となる細胞表面の受容体が大人より少ないという生物学的な要因ですが、さらに大きいのは社会的要因です。だれもが感受性を持つ新しいウイルスはまず、社会の中で活発に動く人たちの集団で広がる。具体的には10代後半から20~30代ぐらいの若い大人が感染の中心になって、上下の年齢層に広がっていく。最終的には年齢構成の人口比に沿った感染割合になっていく。流行が長引き、子どもたちに感染の順番がまわってきた、ということです。そこに変異株が拍車をかけた。子どもに感染しやすくなったのではなくて、大人も子どもも感染しやすくなった中で、これまであまり目立たなかった子どもの感染が目立ってきたのだと思います」
「ワクチンの影響も間違いなくあります。高齢者は接種率が高く、新たに感染する人が減ってきている。年齢が若くなるにつれて接種率が下がり、感染が増える。ほとんど接種していない子どもたちの感染は高い増加率を示しています」
――子どもは重症化しにくいとも言われています。休園などの対応は流行の火種を早めに消すために必要なことなのか、それとも騒ぎすぎなのでしょうか。
「まず何のために休園するかをきちんと理解するべきです。子どものためではなく、大人が困るから休ませている、うつされたら困るという大人の都合で休ませているのです」
「子どもでも重症化することはあるので注意は必要ですが、基本的には3歳から10代前半ぐらいまでは新型コロナが一番重症化しにくい年代です。このウイルスは高齢者には怖いけど、子どもにとってはふつうの『風邪のウイルス』とほとんど変わりません。一方、RSウイルスという乳幼児に対しては新型コロナと比べものにならないくらい危険なウイルスがあり、今年は大流行しています。重症化すると肺炎などを引き起こし、毎年多くの子どもが亡くなっている。でも、RSウイルスが流行したからといって、休園とはだれも言わない。『RSウイルスがはやっているから、園児の半分休んじゃってるわ』などと、ふつうに開けている。子どもが本当に亡くなる危険なウイルスがはやっても休園しないのに、新型コロナで子どものために休園しているというのはおかしいですね」
「目的が大人の感染を防ぐことならば、周囲の大人たちがまずワクチン接種してください、ということです。接種すれば絶対かからないわけではありませんが、確率は下げられる。何より重症化のリスクがかなり小さくなる。保育現場のクラスターも、発端の多くは保育士さんです。学校の先生に比べると、特に無認可施設の保育士さんは接種率がまだ低い。マスクをきちんとする、手洗いをちゃんとやる、部屋の換気をよくすることも含め、大人が感染対策をきちんとすることでかなり対応できると思います」
「大人からの感染が子どものメインの感染経路であることは間違いない。まず親が家に持ち込まない、教職員が保育現場に持ち込まないということが一番大事です」
――保育現場では、感染対策を厳しくするほど子どもの活動が制限され、心身への影響が大きくなるのではないかというジレンマに悩んでいます。
「感染対策をどんなに頑張っ…
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