アベノミクス継承か、新自由主義転換か 高市氏と岸田氏の経済政策は
高市早苗前総務相と岸田文雄前政調会長が8日の記者会見で、自民党総裁選で主張する経済政策をそれぞれ披露した。高市氏は安倍前政権の経済政策「アベノミクス」を引き継ぎ、積極的な財政出動をさらに進める方針を打ち出した。岸田氏は中間層への分配を重視し、「所得倍増」を実現すると強調した。
積極的な財政出動 財源どう確保
「サナエノミクス」
アベノミクスになぞらえて、自身の経済政策をそう銘打った高市氏。その政策の最大の柱は、徹底した歳出拡大路線だ。「物価上昇率が2%の目標を達成するまで」という条件はあるものの、先送りを繰り返しながらも従来の政権が掲げ続けてきた財政再建目標さえ凍結し、積極的な財政支出をはかることを主張した。アベノミクスは再建目標にこだわったことで、財政政策が十分機能しなかったとみるためだ。
その政府のお金の使い方として打ち出したのが、サイバー攻撃や災害などの様々なリスクを減らすための「危機管理投資」だ。具体的には、感染症に対応するのに必要な医療資機材の国内生産の支援や創薬のための研究開発、人材強化などを挙げた。自然災害に備えた公共事業などに10年間で約100兆円規模を投じる方針も打ち出した。安倍晋三前首相に近い高市氏らしく、経済安全保障を重視する姿勢がうかがえる。
このほか、ベビーシッターなどの国家資格をつくり、利用額の一部を税額控除するなど子育て世帯向けの支援策も示した。
ただ、雑誌などで示していた金融所得課税の強化はこの日、触れることはなかった。巨額の財政支出の裏付けとなる財源をどう確保するのかが問われることになりそうだ。
中間層への分配重視 「3本の矢」は堅持
対する岸田氏がこの日の会見で最初に訴えたのは、規制緩和や構造改革を重視してきたことの弊害だった。「富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の格差と分断を生んできた」との認識からだ。
富裕層が豊かになれば、いずれ庶民にも成長の果実がしたたり落ちるとするアベノミクスで主張された「トリクルダウン」が起きておらず、「市場に任せるだけではうまくいかない部分もあった」と指摘。果実の「分配」に意識的に取り組む姿勢を強調した。
宏池会(岸田派)の創設者で元首相の池田勇人氏が1960年代に掲げた「所得倍増計画」を参考に、多くの人の所得を増やす「所得倍増」を掲げた。具体策として家計の重荷とされる教育費や住居費の支援、看護師や介護福祉士、保育士らの待遇改善、大企業による厳しい原価低減要求から中小企業を守る施策などを並べた。「格差の拡大を抑え、国の一体感を維持することが重要だ」と語った。
一方で、アベノミクスについては「間違いなく経済は成長した」と評価し、3本の矢の大規模な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略は堅持するとした。
新型コロナ対応の経済対策は数十兆円規模でまとめる考えだ。国債を財源とし、消費税は「当面触らない」と主張。財政再建の旗は降ろさないとしたが、具体策は語らなかった。
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