旋風なき「れいわ」どこへ 衆院選で山本氏の復帰なるか

北見英城
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 7月の東京都議選では、山本太郎氏が代表を務めるれいわ新選組が初めて挑んだが、獲得議席はゼロに終わった。2019年参院選に起こした「れいわ旋風」は吹かず、山本氏にとって昨年の都知事選に続く敗北となった。秋までにある衆院選で国政復帰を狙う山本氏だが、ブームは去ってしまったのか……。

 「議席獲得に届かなかったことだけを考えれば敗北だが、プロセスについては獲得できたものがある。次につながる」

 山本氏は都議選の投開票から4日後の今月8日、記者団にこう語った。前向きな言葉を重ねたものの、表情は終始硬かった。

 れいわは都議選で足立、杉並、世田谷の3選挙区に候補者を擁立した。山本氏は2013年の参院選の東京選挙区で初当選した際も、20年の都知事選に挑戦した際も、いずれも六十数万票を集めた。山本氏が立候補していないとはいえ、一定の票を見込んでいた。

「ブームは過ぎ去ったのかな」党関係者は漏らす

 山本氏は選挙戦中、周囲に「これまでの蓄積がどれだけ形になって表れるのか、見てみたい。今回の選挙で東京に基盤をつくれるかどうかだ」と語るなど、次の衆院選への「試金石」に位置づけていた。

 しかし、結果はゼロ議席だった。党関係者は「ブームは過ぎ去っちゃったのかも」と肩を落とす。

 敗因の一つは、山本氏の発信力の低下だ。れいわは19年参院選で2人が当選したが、山本氏は落選。国会で追及する機会はなくなった。立憲民主党のある議員は「バッジを失って発信力が弱くなった」と話す。

 そこに新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけた。大規模な街宣活動を封印せざるを得なくなり、有権者に直接訴える機会が減った。山本氏は都議選中、「密」を避けるため演説場所を告知しない「ゲリラ街宣」を繰り返した。「動員をかけるのはリスキーだった」と振り返る。

 ただ、知名度のない新顔候補にとっては痛手だった。党関係者は「代表が来るとなると人は集まってしまう。私の所にも『いつ代表が来るのか』と問い合わせがあった」ともどかしさをにじませた。

 また、山本氏の主張も目立たなかった。これまで大胆な財政出動を訴えてきたが、コロナ禍で他党も10万円給付や消費減税に触れるようになり、差別化が難しくなった。

 衆院選に向けて、カギを握るのは山本氏の去就だ。

山本氏、次の衆院選の選挙区「五つ程度にしぼった」

 山本氏は国政復帰を狙う意向を示している。立候補する選挙区について「五つ程度にしぼった」と語る。

 今月17~18日に行った朝日新聞の世論調査では、衆院選比例区の投票先で、れいわは国民民主党社民党を上回る2%だった。今なお一定の支持層を維持し続けている。

 課題は、選挙で戦えるだけの組織づくりだ。次に衆院選のある立候補予定者は、ポスター貼りでボランティアを集めたが、集合場所にポスターを届けるために電車で運んだ。タクシー代などが工面できず、党からの支援もなかった。「1人で持てる分のポスターしか運べなかった」と話す。

「たかが山本、されど山本…」

 党の知名度の問題もある。党関係者は「山本太郎は応援するが、他の人はダメだ」とポスターを貼ることを断られた。電話では「れいわ新選組」と名乗ると「何それ」と言われた。この関係者は言う。「都議選で分かったことは、『れいわ』と山本太郎が結びついていないということ」

 れいわ内に葛藤がある。別の立候補予定者は「何としても山本氏に国会議員に返り咲いてほしい。そのためには、山本氏は自分の小選挙区に張り付かざるを得ない。山本氏の応援は無いものとして戦う」と話す。党関係者はこう言う。「結局は、山本太郎に頼るしかない。たかが山本太郎、されど山本太郎」

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    前田直人
    (朝日新聞デジタル事業担当補佐)
    2021年7月21日0時30分 投稿
    【視点】

    ブームというのはそもそもが一過性のもので、それじたいが長続きすることは期待しない方がいいでしょう。日本新党、みんなの党、日本未来の党など、当初は注目されながら消えていった政党はいくつもあります。しかし、国政で長らく生き残ってきたのは、地方選

    …続きを読む