ウイグル問題で捜査、不買運動で業績打撃…アパレル難局
中国・新疆ウイグル自治区の強制労働問題を巡り、アパレル大手に厳しい視線が向けられている。フランスでは1日、仏検察がファーストリテイリングの現地法人に、人道に対する罪に加担した疑いで捜査を始めたとの報道も出た。一方、新疆綿を使わない方針を打ち出したスウェーデンの「H&M」は、中国の不買運動で業績に影響が出ている。
仏調査報道機関のメディアパルトが報じた内容によると、捜査対象はファストリ傘下のユニクロ、ZARAを展開するスペインのインディテックス、米靴大手スケッチャーズ、仏アパレル大手のSMCP。人権NGOなどが4月、ウイグル族らが労働を強いられている工場で作られた製品を扱っているとして4社を告発し、捜査は6月末に始まったという。
1月には米政府の輸入禁止措置に違反したとして、米税関・国境警備局にユニクロの綿製シャツがロサンゼルス港で輸入を差し止められたばかり。人権問題に敏感な欧米諸国の厳しい視線にさらされている。
ファストリは2日、「ユニクロが製品の生産を委託する縫製工場で新疆ウイグル自治区に立地するものはなく、ユニクロ製品向けの生地や糸を供給する工場で、同地区に立地するものもない。素材も、生産過程で人権や労働環境が適正に守られていることが確認されたコットンのみを使用している」とのコメントを出した。サプライチェーン(供給網)で強制労働の問題がないように監査を続けており、強制労働が確認された事実はなく、強制労働が確認された場合は取引を停止するとしている。
ウイグル自治区で生産される新疆綿は、世界の綿花生産量の約5分の1を占める。安価で高品質なため、衣料各社にとって重要な素材の供給元だ。ただ、中国当局による強制労働が取り沙汰されて以降は、「H&M」のように取引をやめた企業もでてきた。
H&Mに対しては、中国の共産党系団体が批判し、不買運動が起きた。そのため、同社が1日に発表した2021年3~5月期の中国での売上高は、前年同期比28%減の16億2400万クローナ(約211億円)に落ち込んだ。
売り上げの中国依存度は7・9%から3・5%に低下。中国の店舗数も13店減の489店となった。一連の問題が落ち着かない限り、中国以外の市場に注力することになりそうだ。
中国外務省の汪文斌副報道局長は2日の定例会見で「新疆ウイグル自治区で強制労働が存在するというのは、米国など一部の国によるでっち上げで、中国を抑え込むことが目的だ。いかなる外国勢力が中国内政に干渉することも断固反対する」と非難した。
「ユニクロ」のフランス法人…
- 【解説】
なぜH&Mは新疆綿を調達しないと宣言できたのか。経済安全保障の専門家に聞いたところ、売り上げに占める中国の割合の小ささを指摘していました。不買運動が発生していない20年3-5月期時点で全体の7.9%でした。3位の市場でしたが、最大市場のド
…続きを読む