ベトナム人実習生に法外な手数料 知らないでは済まない
記事のポイント
・技能実習生として来日するベトナム人の大半が手数料のために借金を背負っている
・ベトナム政府監査院は高額手数料の横行を厳しく批判。変化の兆しがうかがえる
・実習生に負担をさせないための仕組みが必要。両国の政府、関係者の責任は重い
政府監査院が厳しく批判
日本にやって来るベトナム人技能実習生は、大半が「送り出し機関」と呼ばれる本国の人材派遣会社に仲介手数料を支払っている。手数料の上限額は3600ドル(約40万円)と定められている。
だが実態は全く異なる。100万円を超えるほどの法令違反の請求が横行し、実習生は実家の土地や家を担保に銀行などから金を借りて支払う。多額の借金を抱えたまま日本で働き始めることが常態化している。
ベトナムで働いて得られる年収の数倍に及ぶ額を返すには、何があっても日本で働き続けなければ、と追い込まれ、劣悪な労働環境でも声を上げることはできない。一方で、低賃金に耐えきれず逃げ出し、不法就労する事態も招いている。
出入国在留管理庁によると、2019年に失踪した実習生は8796人。その7割がベトナム人だ。新型コロナウイルスの影響で昨年は減少したが、過去5年で見れば増加傾向は変わらない。2番目に多い中国人と比べても突出している。
失踪者の急増が日本で問題になり始めたことを受け、ベトナムで最近、動きがあった。
「海外で働く労働者の正当な権利と利益に適正な関心を払っていない」。政府監査院は、3月に出した検査報告書で技能実習制度を問題視し、担当する労働・傷病兵・社会問題省を厳しく批判した。実習生の失踪について「日本側と合意した内容に適合しない手数料が原因」と指摘。見て見ぬふりをされてきた手数料問題に踏み込んだ。
さらに同省傘下の海外労働管理局について「手数料徴収の監督ができておらず、長期間にわたって7千~8千ドルの高額な手数料を労働者に負わせる結果をもたらした」と責任を断定した。身内である政府機関の怠慢を非難し、責任者の処分まで求める異例の内容だ。国際労働機関(ILO)も高額手数料を問題としており、ベトナム政府は対策を迫られている。
カラオケ代や賄賂を転嫁
実習生はなぜ高い手数料を支払わされてきたのか。
経済発展が続くベトナムだが、19年の農村部の月平均所得は1万6千円で、都市部のほぼ半分だ。そのため、急増してきた来日実習生の中では、農村部出身者が中心を占めるようになっている。送り出し機関の大半はハノイやホーチミンなど大都市にあり、ブローカーに一定の費用を払って頼まなければ人材を集められない。
日本の監理団体や受け入れ企…