コロナ禍の看護師 苦闘続く、メンタル支援を求める声も

照井琢見
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 医師とともにコロナ禍の最前線に立つ看護師。「第4波」に見舞われている愛媛県内の看護師はいま、何に直面しているのか。近代看護の礎を築いたとされる英国の看護師ナイチンゲールが生まれた「看護の日」の12日、県看護協会の小椋史香会長に聞いた。

 「変異ウイルスの影響なのか、患者の容体が急変するケースが増えており、非常に厳しい状況が続いている」。第4波の現状を、小椋さんはこう話す。

 県看護協会は、軽症患者向けの宿泊療養施設で働く看護師の確保や、勤務管理にあたっている。限られた病床は症状の重い患者が使うため、宿泊療養施設と病院とで患者が入れ替わる状況が続いているという。「できるだけ昼間の移転を調整しているが、夜中に移ってもらうこともある」

 4月下旬からは、療養施設にいる患者の一部に対して、従来の健康観察に加えて採血を実施。炎症を抑える薬の処方も始め、症状悪化の早期察知や初期治療の態勢を強化している。「病床に余裕がない状況で、本当に必要な人に医療を提供できるよう、できる限りのことをやっている」

 療養施設で働く看護師の多くは、いったん離職や退職をした「潜在看護師」。協会の「ナースセンター」の募集に「少しでも貢献したい」「役に立ちたい」と応募があるという。

 集まった看護師に対して、協会はオリエンテーションを実施している。感染症対応の専門知識を持った看護師が研修をした後、施設に派遣する。協会は5月12日現在、のべ153人の看護職や保健師を療養施設と保健所に派遣している。

 キャリアを積んだベテラン看護師も多い。「療養施設には非常に不安に思っている方や、健康観察の電話に出ない方もいる。経験ある方ならうまく対応してくださるので、ありがたい」と小椋さんは話す。

 一方、宿泊療養施設で働く看護師が最も苦労するのは、「感染への不安感」だと指摘する。「力になりたい」と応募してきた人でも、家族の反対に遭って希望を取り下げる事例もあったという。

 不安軽減のため、協会は希望した看護師に対し、防護服を着て、患者と距離を取る▽健康観察は電話で行う▽何かあれば、患者の部屋には医師と一緒に入る、といった対策を説明。「あなた一人で危険な目に遭うことはないということを、丁寧に話していくしかない」という。

 協会には、新型コロナウイルスの中等症患者や重症患者に対応する医療機関からの声も寄せられている。

 多いのは、メンタル面の支援を求める声。小椋さんは「燃え尽きてしまう看護師が大勢いる。特にクラスターが発生した機関の職員に多い」。協会は、精神科医臨床心理士を施設に派遣することを検討しているという。

 先の見えないコロナ禍で看護師たちの苦闘が続く。小椋さんは「看護師という職業が、若者に敬遠されるのでは」と心配していたが、今年、県内の看護学校では受験者や入学者が増えたと聞き、考えを変えた。「感覚としては、嫌だなと離れていく人と自分も役に立ちたいという人が半々。若いチャレンジャーが『看護師になってよかった』と思えるよう、働き続けられる環境を整えていきたい」

 感染状況の収束は見通せないが、「悲観はしていない」と小椋さん。感染防止策やワクチンが社会に浸透し始めれば、「感染症は一気になくなりはしないが、暗い方向には行かない」と話す。

 「結局は一人ひとりが感染防止の行動を取るのが早道。それが看護師を含めた医療従事者への一番のエールになります」

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