半世紀前に廃線となった江若(こうじゃく)鉄道(浜大津―近江今津)で、唯一残っている近江今津駅舎(滋賀県高島市今津町住吉2丁目)が解体される予定なのを受け、地域住民や鉄道ファンら約50人が3日、駅舎近くでしのぶ会を開き、思い出を語って名残を惜しんだ。

 江若鉄道は近江と若狭を結ぶ鉄道として、1921年3月に三井寺―叡山で開業。31年1月に近江今津まで延伸した。だが、ほぼ同区間を走る旧国鉄湖西線の建設で、69年10月末で営業を終えた。

 近江今津駅舎を引き取ったJA今津町が旅行センターや倉庫などとして活用してきた。しかし、築約90年で老朽化が進み、台風などで周辺住民に迷惑をかける可能性があるとして、理事会で解体を決めた。

 唯一残る三角屋根が印象的な駅舎を保存しようと、2019年から市民有志らが「駅舎の会」や「駅舎保存活用協議会」を相次いで立ち上げ、JAと話し合ってきた。だが、JAがJAレーク滋賀に合併する直前の21年3月の協議で建物の売却条件などが合わずに交渉は決裂。協議会によると、大型連休明けから解体に向けた工事が始まるという。

 集会に参加した高島の歴史を考える会の沢田市治(いちじ)代表(65)は「父が江若鉄道の社員で、小さな頃からよく遊びにきた。貴重な駅舎を使って今津の活性化を図っていこうとしていただけに非常に残念」と話した。協議会では引き続き、保存に向けて再検討してほしいとしている。(松浦和夫)