未成線ツアー、「本物志向」にこだわる

平賀拓史
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 栃木県茂木町と町観光協会が未成線を使って企画した「未成線の旅」が人気だ。以前から観光資源として注目されていたが、観光庁の支援事業に選ばれて補助金がつき、遊歩道を整備。ツアーが実現した。

 ツアーは「本物志向」にこだわった。500メートルごとに線路脇に「距離標」(キロポスト)を設けた。観光協会事務局長の滝田隆さんは資料を読み込み、旧国鉄時代の仕様を再現してもらった。茂木駅から約6キロ離れた下野中川停車場跡には撮影スポット用に「しもつけなかがわ」と書いた駅名板を設置した。

 オリジナルのヘッドマークも作成。町職員の加藤光樹さん(30)が地元の山々などを描いた。ツアーは5月下旬まで計10回計画している。それ以降もツアーを企画する予定だ。

 滝田さんは「下手なガイドはできない。案内やルートのノウハウを体系化したい。持続可能なツアーにしていきたい」。

 未成線巡りがライフワークで、「鉄道未完成路線を往く」の著書もある鉄道ライターの草町義和さん(51)によると、1980年代から「廃線跡巡り」が盛んになり、未成線も注目が集まってきたという。

 奈良県五條市から和歌山県新宮市にかけて計画があった未成線「五新線」跡地は、映画「萌の朱雀」のロケ地となり話題となった。地元では「五新線再生推進会議」が立ち上がり、沿道整備や遺構観光ツアーの誘致につながったという。17年には五條市で「全国未成線サミット」を開催。今年11月には島根県浜田市で第3回サミットが開かれる。

 草町さんは「自治体は観光振興だけではなく、老朽化した遺構の維持費を担う覚悟も問われている。未成線は『不要不急線』として放棄された鉄道。負の側面も含めて語り継いでいく必要がある」と指摘した。(平賀拓史)

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