7歳娘の目の前、夫は切り刻まれた エチオピア虐殺の町

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マイカドラ〈エチオピア北部〉=遠藤雄司
【動画】600人超の市民が虐殺されたとされるエチオピア北部ティグレ州マイカドラに朝日新聞記者が入った=遠藤雄司撮影
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 エチオピア北部ティグレ州で政府軍と地元政党の軍事衝突が始まり、4日で5カ月となる。今も戦闘は続き、市民を狙った殺戮(さつりく)や性暴力の報告が相次いでいる。現地からの報道が限られる中、市民が虐殺されたとされる州西部マイカドラに朝日新聞記者が入った。

 3月下旬、町中心部にあるアブネ・アレガウィ教会の門前市にはトマトやバナナ、豆などの食料品が豊富に並び、電気は復旧しておらず、ネットや電話も頻繁に通じなくなるが、買い物客などで活気づく日常の風景が広がっていた。だが、教会の裏手に進むと様相が一変した。

 石を積み上げただけの簡素な墓が並ぶ。身元を特定できなかった遺体も多く、数十人がまとめて埋められたため、墓標には名前すら刻まれていなかった。

 政府系のエチオピア人権委員会の調査によると、政府と対立する地元政党ティグレ人民解放戦線(TPLF)の民兵などが町を襲い、少なくとも600人の住民が殺害されたとみられている。

 墓から車で数分走った住宅地には焦げた地面が広がり、柱の一部が焼け残っていた。焼け跡にいたアゲレイさん(28)に声をかけると、疲れ切った表情でつぶやいた。「夫はここで撃たれ、切り刻まれ、燃える家に投げ込まれた。私と7歳の娘の目の前で」

記者が現地入り、一変した町の様相

 衝突は昨年11月4日に始まった。国政の主導権を失ったTPLFが軍施設を襲撃したとし、アビー首相が「反撃」を命令。政府軍は同28日に州都メケレを制圧し、アビー首相が勝利を宣言したが、TPLFの抵抗は今も続いている。

 これまでに同州からは6万2千人超が隣国スーダンに逃れ、難民となった。

 戦闘が始まった直後から州内の通信は長期間遮断された。政府はメディアの立ち入りを厳しく制限したが、政府軍とTPLFの双方による市民の殺害や性暴力などが報告されてきた。今月2日には、主要7カ国(G7)の外相が「強く懸念する」と表明した。

一部始終を目にして気を失った娘

 アビー首相は隣国エリトリアとの紛争を解決した功績が認められ、2019年にノーベル平和賞を受賞した。だが、今回の衝突では強硬姿勢を貫いている。

 人権委は3月、政府軍側で参…

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