運賃無料、記念硬券配布も 上田電鉄が28日に全線復旧

滝沢隆史
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 2019年10月の東日本台風で一部区間が不通となっていた上田電鉄別所線長野県上田市)が28日、1年5カ月ぶりに全線開通する。当日は全区間で終日運賃を無料にするほか、記念硬券の配布など、復旧を祝うイベントが開かれる。

 千曲川にかかるシンボルの赤い鉄橋「千曲川橋梁(きょうりょう)」の一部が崩落したが、約8割の部品を再利用し再建、新しく線路や堤防道路の踏切を設置した。事業費は約9億円。うち97・5%を国が実質的に負担する。

 28日は本数の多い平日ダイヤをさらに増便し、臨時の1番列車が午前5時55分に上田駅を出発する。上田駅の改札では、希望者に硬券の乗車証を無料配布(数量限定)。復旧までの経過を写真などで振り返る台紙付きの開通記念切符も売り出す。

 上田駅に乗り入れるJR東日本や、しなの鉄道(上田市)も駅構内で、鉄道グッズ販売などを予定している。また、3社合同で企画した記念切符も各社の窓口で販売する。

 県内での感染拡大を受け、イベントの内容は変更となる可能性がある。

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 シンボルの赤い鉄橋の再建には、全国から多くの支援が寄せられた。被災直後の2カ月で、上田電鉄に集まった寄付は約1700万円。その後、長野県上田市が設けたふるさと納税「別所線応援コース」には、計3040件約8200万円(今年1月末現在)の申し込みがあった。地元の大学生も中づり広告をつくり、応援した。

 長野大(上田市)の学生有志は、個人や企業から広告料を募り、電車の中づり広告に掲載する応援メッセージを募集。集めた広告料は上田電鉄に渡し、企業の協賛や自らの持ち出しで広告を作製した。被災直後と今年2月、別所線の駅などで計231件のメッセージを集め、広告料として計約41万8千円を届けた。

 2019年冬には、たまたま別所線終着駅別所温泉(同)を訪れていた歌手の松任谷由実さんと遭遇。松任谷さんがその場で快諾し「別所線応援してます」とのメッセージを寄せた。

 企画の中心を担ったのは環境ツーリズム学部2年の植田晃弘さん(21)。金沢市出身で、大学では鉄道サークルに所属する。「金銭面だけではなく、応援の気持ちも一緒に届けたい」と中づり広告に着目。大学でデザインを学ぶ友人らにも声をかけ、有志10人程度で活動を始めた。

 被災前、別所線は大学の課外授業で月に数回乗る程度で「特別な思い入れはなかった」が、活動を通して「生活の足として地域に愛され、心のよりどころになっている。自分たちが守る、という熱い気持ちを肌で感じた」という。

 23日には、全線開通に合わせて掲示する新しい広告72枚を届けた。鉄橋のシンボルカラーの赤や、満開の桜と新たな門出を連想させるピンクを基調にしたデザインで「おかえり!赤い鉄橋!!」「夢とワクワクを乗せて再び!!」などのメッセージが入った。上田電鉄の矢沢勉・運輸課長は「本当に勇気をもらった」と大切に受け取った。

 メッセージ広告は所有する全5編成の車両のうち、3編成に掲示。28日の1番列車でお披露目される。植田さんは「別所線と応援する人たちの声をつなぐかけはしになれた」と話した。(滝沢隆史)

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