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マスク非着用で雇い止めは「違法」 KDDI系を提訴へ

遠藤隆史
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 職場でマスクを着用しないことを理由に、雇用を打ち切られたのは違法だとして、近畿地方の40代の男性が、KDDIの子会社「KDDIエボルバ」(東京)を相手取り、雇用契約の確認などを求める訴訟を近く大阪地裁に起こすことがわかった。男性はマスクを着けないのは持病の皮膚炎を悪化させないためだとし、会社側は就業規則違反を理由に雇用打ち切りは正当だと反論する。

 男性側の代理人弁護士によると、マスク着用をめぐる雇用トラブルが訴訟になるのは異例だという。

 訴状によると、男性は2015年に同社に契約社員として採用され、大阪市のコールセンターで携帯電話の修理受付などを担当した。顔や手にアトピー性皮膚炎があり、一般的な不織布製だけでなく、ウレタン製などでもマスクで肌が刺激を受けると症状が悪化するため、新型コロナウイルス禍でもマスクを着用しなかった。当時は上司の求めに応じ、職場で肌と接触が少ない口元を覆うタイプのマウスシールドを着けた。

 その後、上司からマスクの着用を求められたため、2回にわたって「不織布マスクが刺激になる」「マスクをつけた方が皮膚炎の症状が出やすい」とする医師の診断書を会社に提出。今年1月には「マスク代わりに(顔全体を透明なプラスチックで覆う)大型フェースシールドを着ける」などの代替案を提案したが、会社側からは「職場の安全管理や秩序維持の観点を総合考慮し、就業規則違反にあたる」と通告され、2月で雇用を打ち切られた。

 男性は、職場では正面と両隣には誰も座らず、飛沫(ひまつ)予防のアクリル板も置かれたと主張。マスクを着用しなくても感染対策は可能だったとして会社側の対応は社会通念上の相当性を欠くと訴える。

 対して会社側は、今月に男性側に送付した文書の中で、男性から診断書の提出を受けた後もマスク着用を求めたことは認めつつ、「診断書では不織布マスク以外のマスクをつけた際の影響の有無などが確認できなかった」と主張。マスクの着用は就業規則に従ったもので、雇用打ち切りは差別的取り扱いではないと反論する。朝日新聞の取材に対し、「(男性の訴えは)事実関係とかなり相違がありますが、具体的な中身はお答えできかねます」と答えた。

 原告側代理人の西川翔大弁護士は「やむを得ない事情のある労働者にマスク着用を強制することは許されない。コロナ禍で企業に求められる安全配慮のあり方を問いたい」と話す。遠藤隆史

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