柳田将洋の不安、五郎丸のルーティーン発案者が導く答え

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構成・木村健一
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 バレーボール男子日本代表主将の柳田将洋(28)には心の師がいる。2015年ラグビーワールドカップ(W杯)日本代表でメンタルコーチを務め、五郎丸歩のプレースキックを蹴る前のルーティンも一緒に作り上げたスポーツ心理学者の荒木香織さんだ。欧州挑戦前に荒木さんの指導を受けて以来、オンラインで4年ぶりに再会し、当時抱えていた悩みや、今直面する課題などについて語り合った。

 〈柳田は2017年に欧州に挑戦した。荒木さんの指導を受けたのは渡欧直前だった〉

 柳田 当時は2年目で、いろいろチャレンジしようという時。不安や悩みがいっぱいあった。

 荒木 答えを提供するというよりは、話をしながら「大丈夫だね」「そうでいいんじゃないかな」とか。そんな感じだったかな。

 柳田 「あ! 確かにそうだ」ということがたくさんあった。考え方を一つ変えるだけで、スムーズにことが働くのかと、すごいびっくりした発見だった。今も生きている。

 荒木 あの時も、「将来、代表でどんどん活躍して、キャプテンになったら……」と言ってたよね。

荒木香織(あらき・かおり)

京都女子中高、日大文理学部では陸上競技短距離で全国大会に出場。大学卒業後、米ノースカロライナ大学大学院でスポーツ心理学を学び、博士号を取得。2015年までラグビー男子日本代表のメンタルコーチを務めた。園田学園女子大教授。

 柳田 「しんどかったら、普通に帰ってきたらいいやん」と言われた。「そうか。自分のやりたいこと、やればいいんじゃん」と腑(ふ)に落ちた。自分がやりたいようにやって、楽しんでいったら一番プラスと、海外に行けた。楽しいと思えたのは、きつかったら帰ればいい、とりあえず今年やってみるかぐらいの感覚でできたから。3シーズン、ガッツリできた。得るものも大きかった。

 荒木 人は、先が明確でない状態が一番不安にはなる。行ってダメだったら、通用しなかったらどうしようと。心理学的には、不明瞭なことをどれだけ取り除いていくか。

 「頑張れ、頑張れ」と言っても、不安を増すだけ。心理的に帰る場所があると思っていたら、そんなに不安にはならない。別に無理して海外でプレーしなくても、日本でもいろんなチャンスはある。励ましの意味も込めて、「ダメだったら帰ってくるのもいいんだし、問題ないと思うよ」という声かけをした。

 柳田 「自分の好きなようにしたらいいや」と、今の環境をどう楽しむかにフォーカスを当てられるようになった。大事なのは自分が何をするか、どういうマインドで試合に臨むか。その癖や習慣がついた。

 荒木 出てみて、よかったね。

延期されたオリンピックへの期待と不安、プレー前のルーティーンの意味、しんどい時の対処法など、「心の師」との対談は記事後半へ。動画もご覧いただけます。紙面では2月25日付の朝刊で詳報しています。

 柳田 相手や人のプレーに要…

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この記事を書いた人
木村健一
スポーツ部次長|高校野球・ゴルフ担当
専門・関心分野
スポーツと社会・ビジネス、調査報道、オリンピック、野球、ゴルフ