「兄貴、久しぶりだのう」落ちた零戦、発掘された現場で

戦後75年特集

稲田博一
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 終戦の日に墜落したとみられ、今年1月に千葉県大多喜町泉水でエンジンなどが掘り出された戦闘機零戦をめぐり、操縦していた可能性のある2人の内の1人の遺族が23日、墜落現場などを訪ねパイロットを慰霊した。

 同県睦沢町立歴史民俗資料館などの調査で、この場所に墜落した零戦の操縦士は、1945年8月15日、現在の同県茂原市にあった茂原海軍航空基地を飛び立った杉山光平上飛曹か、増岡寅雄・一飛曹のどちらかに絞られている。

 この日、現地を訪れたのは杉山上飛曹の弟の杉山栄作さん(91)=静岡県掛川市=とその家族3人。「兄か、兄でなくても親しかったであろう戦友を慰霊したい」という思いからだ。

 先に同資料館で掘り出された機関銃やエンジンを見た。「よく残っていた。すごいものを見せてもらった」と栄作さん。その後、発掘現場では「兄貴、久しぶりだのう。よかった。成仏してくれよ」と語りかけたあと、冥福を祈った。

 この場所に墜落した零戦の操縦士をまつったとみられる墓は、大多喜町内で20日に同資料館学芸員の久野一郎さん(64)により確認されている。その墓も訪ねた栄作さんは「よくぞ、お墓を作ってもらった。ありがたい。兄貴も救われる」と話した。

 エンジンの発見場所近くからは、1月25日に人骨とみられるものも見つかっている。地元の警察に届けてあり、久野さんは「DNA鑑定で判定されることを期待している」と話していた。増岡一飛曹については、遺族などは分かっていない。(稲田博一)

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