第1回トラブル、転居、脱出…ベトナム人実習生、暗転のリアル

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山本知佳 宋光祐
【動画】名古屋のシェルターに保護されているベトナム実習生の家族
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 技能実習生として来日したあるベトナム人女性が、名古屋市内のシェルターに身を寄せている。なぜ、実習先を離れることになったのか。送り出した家族はいま、何を思うのか。彼女の「失踪」を通じて、日本とベトナムで技能実習の現場に迫った。

 「はやく、働きたい」

 ハンさん(22)はいま、名古屋市内にあるキリスト教系団体のシェルターにいる。

 2020年3月下旬に、技能実習生として日本にやってきた。

 実習先は、静岡県焼津市にある水産加工会社。面接を受けた首都ハノイの人材派遣会社で、そう決められた。

 どんな仕事がしたいのか、希望は聞かれなかった。山あいの農村の出身で、魚をさばいたことはなかった。その会社で研修を受けるまで、日本語も学んだことはない。

 それでも、不安はなかった。

 実習生として先に日本に赴いた友人が、フェイスブックに笑顔の写真をアップしていた。「給料はベトナムの倍以上」。尋ねると、そんな返事が返ってきた。

 お金が稼げる上に、サクラも、雪も見られるかもしれない――。調べてみると、焼津ならば富士山も望めそうだった。

 来てみると、日本は思っていた通り「ステキな場所」だった。

 日本人の従業員はみな、やさしかった。休みもきちんととれた。会社の近くからは、小さいながらも富士山を見ることもできた。マグロやサーモンなどの刺し身をパックに詰める作業は、長時間立ちっぱなしのこともあったが、それほどきつくは感じなかった。

 ベトナム人実習生はほかに2人が働いており、アパートで一緒に暮らした。

 4月に受け取ったのは10万円ほど。ベトナム南部の大都市ホーチミンで結婚式場のメイク担当として働いていたころ、月給は800万ドン(約4万円)だった。確かに、稼ぎは倍以上になった。半分は両親に仕送りした。

 それが、5月に暗転した。

 「服をたたんで、ベトナムへ帰れ」

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 ある日、アパートにやってき…

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この記事を書いた人
宋光祐
パリ支局長
専門・関心分野
人権、多様性、格差、平和、外交